福岡歯科大学

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学部・大学院

西尾 淳 教授 インタビュー

「地域に根ざした整形外科を目指して」
2023.11.01
総合医学講座 整形外科学分野
西尾 淳 教授

――先生のご出身はどちらでしょうか。

西尾:出身は福岡県筑紫野市です。二日市温泉湯町で生まれ育ちました。実家のお風呂には温泉が引かれていたので、温泉三昧の幼少期でした。ただ、温泉とはいっても特有の香りやトロみもなく、温泉なのか普通のお湯なのか違いが全く分からない、正直そんなレベルのものでしたね(笑)
中学・高校は長崎県にある青雲中学校・高校へ進学し、その後、福岡大学医学部に進学しました。
 

――先生はテニスがお上手なんですよね?

西尾:腕前はともかくとして、中学から大学まで硬式テニスをしていました。今でも週に1回は同級生や医師仲間と一緒にテニスをしています。
また、ミュージカルや舞台を観ることも好きですね。手術前にレ・ミゼラブルの民衆の歌を流して気分を高めたりもします。民衆の歌、グッときませんか?(笑)
 

――医師を志したきっかけはありますか?

西尾:きっかけは特になく、父も祖父も医師でしたので、幼い頃からなんとなく医師になるのかなと思っていました。中学・高校の同級生の多くが医学部を目指していたので、医師以外の職業について考えることがなかったような気がします。
 

――なぜ整形外科の道に進まれたのでしょうか?

西尾:大学のテニス部の顧問が故緒方公介先生という整形外科の教授だったんです。アメリカでの臨床経験が豊富で、技術もさることながら、熱意と信念をもった素晴らしい先生でした。大学時代に一番影響を受けた先生といっても過言ではありません。父と同じ小児科へ進むことも考えたのですが、そのような巡り合わせもあり、整形外科に入局したというところです。
 

――整形外科入局後は、大学院に進学されているんですね?

西尾:緒方先生の勧めもあり、初期研修医の頃に2ヶ月間、病理学教室で研修を受けました。そこで病理学に興味が湧いたこともあり、臨床を4年した後、大学院に進学しました。大学院に進学することにより、病理診断の手技と知識を深めることができたのはもちろんですが、菊池病を発見したことで有名な故菊池昌弘先生と骨・軟部腫瘍病理学の大家の岩崎宏先生の2人の恩師に出会えたことが何より大きかったですね。どちらの先生も医師としても人間としても尊敬できるところが多く、お二人からの指導のひとつひとつが私の財産となっています。

 

――大学院時代には留学もされたんでしょうか?

西尾:アメリカ中西部のネブラスカ州オマハにあるネブラスカメディカルセンターに留学しました。当時の研究内容にマッチした女性病理学者のJulia Bridge先生がオマハにいらっしゃったことと、Bridge先生のご主人の故James Neff先生が同センターの整形外科主任教授で骨・軟部腫瘍を専門にされていたこともあり、オマハを留学先に選びました。3年3ヶ月の留学期間でしたが、臨床も研究も両方でき、私にとっては最高の環境でしたね。
 

――現在の研究内容について詳しくお聞かせください。

西尾:希少がんといわれる骨・軟部腫瘍に関する研究をしています。良性腫瘍としては骨軟骨腫、脂肪腫、悪性腫瘍としては骨肉腫、脂肪肉腫、粘液線維肉腫などがありますが、いずれも症例数はあまり多くありません。希少がんの定義が人口10万人あたり6例未満とされていますので、数が少ないがゆえに診療・受療上の課題が他に比べて大きいがんと言えます。そのため、近年、国としても希少がんに対する治療開発研究を積極的に進めるなど、希少がん治療への気運が高まってきました。
 


[AOA(アメリカ整形外科学会) PresidentのMarsh先生ご夫妻と]

 

――医科歯科総合病院には、日本全国から骨・軟部腫瘍の患者さんが来られるのでしょうか?

西尾:骨・軟部腫瘍の治療としては、手術を基本とし、必要に応じて化学療法、放射線療法を行うことが一般的なのですが、トラブルがなかったとしても数ヶ月程度の治療期間が必要となります。骨肉腫の場合は平均的に半年~一年程度の治療期間となるのですが、家族のサポートがないと治療の継続が難しいため、九州内ならまだしも、日本全国から当院に通院することは難しいと思います。現状では、福岡県の患者さんが多いですね。
 

――希少がんのほかに、どのような疾患をお持ちの患者さんが受診に来られますか?

西尾:骨折や捻挫などの外傷性疾患、スポーツ障害、骨粗しょう症、リウマチなどの疾患に対する診断・治療を行うことが多いですね。治療においては、内科や外科、画像診断科など、他科とコミュニケーションを密にとり、動作練習や筋力訓練などのリハビリテーションを通して弱った機能を回復させることを目指しています。歯科に関しても、骨粗しょう症や顎骨壊死などの疾患では、口腔外科と連携をとり、治療にあたっていますよ。医科も歯科も多くの診療科があり、診療科間の連携がとりやすいというのは、当院の良さだと思います。
 


[医科歯科総合病院健康講座での医療相談(向かって左奥が西尾教授)]

 

――歯科との連携もあるのですね。先生は口腔歯学部の授業も担当されていますが、学生にどのような印象をお持ちでしょうか?

西尾:非常に勉強熱心だなと感じています。朝の早い時間から学生ホールで勉強をしている学生をよく見ます。自分自身の学生時代と比べると、大したものだといつも感心しています。また、医療系の学生の特徴かもしれませんが、素直で誠実な学生が多いように思います。「人助けをしたい」とか、「奉仕をしたい」とか、そのような気持ちが他学部の学生と比べると強いのではないでしょうか。
 

――学生へのアドバイスなど、何かございますか?

西尾:アドバイスというほどではないですが、毎日を楽しんでほしいですね。私自身の話になりますが、留学期間中、恩師のNeff先生がいつも”Enjoy your life!”と励ましてくれました。仕事も私生活も、大変なことはあるけど、楽しみなさいと。学生も授業に勉強に大変だと思いますが、楽しく、前向きに充実した日々を過ごしてほしいですね。
 

――最後に、先生の今後の展望についてお聞かせください。

西尾:何かに特化した専門的な整形外科ではなく、地域に根ざした門戸の広い整形外科として、地域医療に貢献したいと考えています。地域の方々に気軽に足を運んでもらえるような整形外科でありたいですね。
 

――本日はお忙しい中、ありがとうございました!

西尾 教授からのビデオメッセージ

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