福岡歯科大学

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川口 智弘 准教授 インタビュー

「未来を見据え、入れ歯材料の研究と教育を次の世代へ継承する」
2022.11.01
咬合修復学講座 有床義歯学分野
川口 智弘 准教授

――先生のご出身はどちらですか?

川口:福岡出身です。小・中学校・高校・大学と福岡で学び、その後は福岡歯科大学に就職しているので、留学していた1年間を除けば、生まれてからずっと福岡ですね。
 

――どのような幼少期・学生時代でしたか?

川口:小学生のころから進学塾に通うなど、勉強づくしで、高校生の頃には勉強に対して燃え尽き症候群のようになっていた時期もありましたね。 でもある時、予備校の講師の方が言った「将来仕事をするなら、好きなことを仕事にしなさい」「勉強させられているのではなく、自分から勉強することが大事」という言葉が勉強に対するモチベーションを上げるきっかけとなり、ポジティブな気持ちで勉強に臨めるようになりました。
 

――そういったことがあったんですね。そんな先生が歯科医師を目指されたきっかけは何かあったのでしょうか?

川口:高校2年生までは工学系にも興味があり、建築士や建築デザイナー、工学と医療を組み合わせた義足などの分野も勉強してみたいなと思っていました。 歯科医師になりたいと思ったのは、高校3年生の春です。実は祖父が歯科医師で、入れ歯を作っていたことなどを聞いたり、義足と義歯が人の機能を回復させるという点で近いものであるように感じたりしたことから歯科医師になろうと決めました。
 

――先生が大学院への進学を決めたきっかけは何ですか?

川口:研修医の夏、福岡で行われたICP(国際補綴歯科学会)に参加したことですかね。 日本だけでなく様々な国からの参加者を目の当たりにして、歯科の世界がまだまだ広いことを実感しました。研究者同士の話し合いの場では、“大学名”でなく“その人が何の研究をしているか”が重要であったため、より深く世界に通用するような研究をしてみたいと感じるようになりました。 髙橋先生(髙橋 裕 現福岡歯科大学長/当時有床義歯学分野教授)に同行させていただき、学会後の食事会でフィンランドの先生方と交流する機会がありました。この時のことがきっかけとなり、大学院進学やその後の留学へつながりましたね。


(フィンランドでの学会発表、髙橋学長・清水客員教授と)

川口:大学院2年次に髙橋先生から推薦をもらい、フィンランドのトゥルク大学に1年間留学しました。初めての海外渡航で語学などに不安はありましたが、現地の上司・同僚などに恵まれて、充実した留学生活でした。その後もフィンランドへ7,8回訪れています。現在はコロナで渡航することはできませんが、今も交流は続いていますよ。


(フィンランドでの恩師Lippo先生と)

――留学先で印象に残っていることなどはありますか?

川口:仕事に対するオンオフのメリハリがはっきりしていたことでしょうか。例えば、大学での業務時間は8-15時で16時には鍵が締まっているんです。そして仕事の後は、家で家族の時間を大事にしていたことが強く印象に残っています。 あと驚いたのは、フィンランドでは仕事中にコーヒータイムを確保する権利が法律で決められていることですね。(笑) 現地の社会保険制度も印象的でした。例えば、フィンランドで歯医者に行きたいと思うとまず保健センターにいき、歯医者を紹介してもらい予約することになっています。実際の治療はそれから約3か月後になってしまうので、それなら自分自身で予防しようという考えが一般的でした。 様々なことを知り、体験することができたので、学生の皆さんにはぜひ海外に行って、世界を見てほしいと思いますね。


(フィンランドのサウナルームでの1場面)

――次に、先生の所属されている有床義歯学分野についてわかりやすく教えてください。

川口:端的に言うと、歯が無い方に入れ歯を作る分野です。入れ歯を作ることで失った機能を回復・維持させて食事する喜びを感じたり、口腔だけでなく全身の健康を維持したりするなど患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に携わることができます。

――有床義歯学分野を専攻された理由について教えてください。

川口:有床義歯学を選んだのは6学年の春ごろだったんですが、理由は当時の自分にとって1番分からない分野だったからです。だからこそ勉強して理解したいと思ったのと、あとはやはりものづくりが好きだったからですね。
 

――現在はどのような研究をされていますか?

川口:入れ歯の材料について研究をしています。入れ歯の材料の耐久性を上げることで、より長持ちする入れ歯を作製したいと考え、セルロースナノファイバーを用いた研究を行っています。

――セルロースナノファイバーとは何でしょうか?

川口:植物を原料とする新素材で、木材などの植物繊維をナノレベルまで細かくしたものです。様々な分野で実用化されており、軽くて強いことから自動車部品や、吸水性を上げるために紙おむつにも使われています。他には、3Dプリンターで植物由来のプラスチック(ポリ乳酸)を使用した義歯の研究も行っています。デジタル化によるデータ蓄積が可能となる点や環境に優しい素材を使用することで今後の治療や環境保全に貢献できるのではないかと考えています。

 
(セルロースナノファイバー、90%以上が水分で構成されている。)

――診療の際に心掛けていることを教えてください。

川口:患者さんと同じ方向を向くことが大事だと思うので、その点を意識しています。患者さんは痛みなどを抱えていてそれを解消してほしいと思っているので、それを一度受け止めたうえで診療方針を伝え、処置にあたっていますね。
 

――診療に関することで何か印象に残っていることなどはありますか?

川口:痛みから解放されている姿を見たときでしょうか。入れ歯治療というのは、患者さんからのレスポンスが比較的早い分野だと思います。 あと、治療に携わった患者さんに久しぶりにお会いした際に、手を握られて再会を感激してもらえたことがあって、それが印象深く残っていますね。
 

――学生への教育で気をつけていることは何でしょう?

川口:学生に対しては、よく自身の学生時代の体験を話しています。学生の時に協力して学びあうことの大切さを感じたため、学生同士で教えあうことが大事だと伝えてます。また、「分からないことを知ることができることはラッキーなこと」ということも話しています。試験で問題を間違うことはネガティブに捉えられがちですが、それは自分の理解が足りていないところを知り理解できる機会を得られた幸運なことだと思ってほしいですね。
 

――最後に、先生の今後の展望について聞かせて下さい!

川口:今後は歯科医療も環境に配慮しながら、発展していくべきではないかと考えています。そのためにも持続可能な環境に優しいセルロースナノファイバーなどの植物由来の材料を用いた研究を進めていきたいです。あとは私を含めて歯科医師はより良い治療のために一生涯学んでいくものだと思っています。また、経験を積んだことを後進の方々に伝授していかなければならないとも考えます。歯科医療において技術・材料などが時代とともに変化していきます。教育の面でも研究の面でも変化に応じて、次の世代・未来へつながることに携わっていきたいですね。
 

――本日はお忙しい中、ありがとうございました!

川口 准教授からのビデオメッセージ

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