福岡歯科大学医科歯科総合病院

福岡歯科大学医科歯科総合病院

文字サイズ

  • 標準
  • 大きく

耳寄りな話

高齢者歯科

摂食・嚥下(えんげ)障害 ~口から食べることができなくなる~

食べ物を食べることは、「食べるものだと認識し、口まで食物を運ぶ過程(先行期)」「口の中に食べるものを取り込んで、かみ切ったり、砕いたりして、唾液と混ぜ合わせて飲み込める状態にする過程(準備期)」「唾液と混合された食べ物のかたまりを口からのどの奥に送り込む過程(口腔期)」「食べ物のかたまりをのどの奥から食道内に送り込む過程(咽頭期)」「食べ物のかたまりが食道から胃の中に送り込まれる過程(食道期)」を連続的に行う作業で、前半部分は自分の意思で顎や舌を動かしますが、後半部分は自動的な反射運動となっています。これらの過程のどこかに障害が起きると、食べること、飲み込むことがうまくできなくなる摂食・嚥下障害が生じます。
脳卒中などによって飲み込みに関わる神経や筋肉の働きが悪くなったとき、パーキンソン病などで神経と筋肉の協調運動がうまくいかなくなったとき、また認知症や加齢に伴って身体が衰弱したときなど、さまざまな病気や状態によって摂食・嚥下障害が起こります。
症状としては、食べ物をうまく口に運べない、かめない、唾液や食べ物が口からこぼれてしまう、口の中に唾液や食べ物が残る、食事に時間がかかる、食べたり飲んだりするとむせる、うまく飲み込めない、食べ物が鼻から出てくる、食事のあとで声がガラガラする、などが挙げられます。
嚥下障害のため肺炎を起こしたり(誤嚥性肺炎と呼ばれます)、食べ物が気道を塞いでしまう窒息を起こしたりすることがあります。また、十分な量の食事を摂ることが困難になり、体重が減ったり、脱水を起こしたりすることもあります。

嚥下(えんげ)障害の検査

嚥下障害の検査には、スクリーニングといわれる簡便な検査と、摂食・嚥下機能を正確に診査するいくつかの検査法があります。
スクリーニングには、反復唾液嚥下テストという、唾を所定の時間内にできるだけ何回も飲み込んでもらい、飲み込みの回数やのどの動きを見る方法があります。30秒間に2回以下しか嚥下ができない場合には、嚥下に問題があることが疑われます。また、改訂水飲みテストという、3mlの冷たい水を口の中に入れて飲み込んでもらう検査も行われます。冷水がうまく嚥下できるかどうか、むせが起きないか、ガラガラ声にならないかどうかを評価します。
摂食・嚥下機能の精密な検査には嚥下造影検査というエックス線ビデオ撮影をする方法が用いられます。これは、水やゼリー、おかゆなどの食事に、レントゲンに白く映る造影剤を混ぜておいて、実際に患者さんに食べたり飲み込んだりしてもらって、飲食物がうまく嚥下できるかを評価する方法です。嚥下機能がうまく働いているか、誤嚥が生じていないかをいちばん正確に判定できる方法だとされています。また、鼻から鼻咽腔喉頭ファイバー(内視鏡)を挿入して、のどの奥の嚥下の前後の状態を直接観察して評価する方法もあります。


内視鏡検査の様子

嚥下(えんげ)リハビリテーション ~口から食べるための練習~

摂食・嚥下障害のリハビリテーション・訓練には、食べ物を用いない間接訓練と、実際に食べ物を用いて食べてもらう直接訓練があります。
間接訓練には、顔や首の筋肉の緊張を解いたり鍛えたりするための嚥下体操やマッサージ、首の筋肉の訓練法などがあります。また、食物を摂取した際のムセに対処するための呼吸法を訓練する方法もとられます。歯や口の粘膜の汚れをきれいにする口腔ケアも、嚥下反射を促進し、気道に入ったものを咳といっしょに出すための防御反応を強化するために有効です。
実際に食べ物を摂取してもらう直接訓練には、食べる際の姿勢を調整して飲み込みをしやすい体勢を整える方法や、食べ物の堅さや粘度、大きさなどを調整する方法、飲み込みのタイミングをはかりながらムセが起こりにくくしていく方法などがあります。
いずれのリハビリテーション・訓練法についても、専門的な知識や経験を持った歯科医師、医師、歯科衛生士などが、指導をしながら行うことになります。


嚥下リハビリテーションの様子

嚥下障害の検査や嚥下リハビリテーションについては、高齢者歯科にご相談ください。