福岡歯科大学

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岡 暁子 准教授(現:教授) インタビュー

「歯科医師は天職!~乳歯の先にある永久歯を守る~」
2019.11.01
成長発達歯学講座 成育小児歯科学分野
岡 暁子 准教授(現:教授)

――先生のご出身はどちらでしょうか。

岡:生まれたのは長崎市内ですが、そのあと大村市、対馬と移り、高校時代は母の実家のある佐賀県で過ごし、大学進学とともに福岡へ来ました。子どもの頃は田舎で過ごしていたので、福岡での生活はテレビで紹介されている物やお店があり、楽しくて仕方ありませんでした。(笑)

―――大学生活で印象に残っていることはありますでしょうか。

岡:硬式テニス部に所属して頑張った思い出があります。入部当初は、女子テニス部があまり強くなかったのですが、強くなりたくて通常の練習のほかに朝練もしましたし、テニスコートの使用時間が少なかったので、交渉して練習時間を増やして、少しだけ強くなることができました。また、テニスの練習試合などを通して福岡歯科大学の学生さんと仲良くなっていたので、本学に着任したとき、かつて一緒にテニスをした先生方と再会して昔話に花が咲きましたね。

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――なぜ、歯科医師を目指されたのでしょうか。

岡:両親ともに医師だったので医療職が身近だったことに加えて、祖父が歯科医師で歯科医院を開業していたのが大きかったと思います。祖父の自宅と歯科医院は隣同士で繋がっていて、遊びに行ったときは、祖父の診療を身近に感じることができました。また、両親が仕事で忙しく帰りを待つことが多かったので、「歯科医師ってお家にいながらお仕事できるからいいな」と子ども心に思っていました。

 

――今、ご専門にされている「小児歯科」に進まれたきっかけは?

岡:大学2年生の時に、アルバイト先の歯科医院で小さな子のパノラマ写真をはじめて見たのですが、そのとき乳歯の下に小さな永久歯がたくさん並んでいることにすごく感動しました。子どもの時はまだ大人の歯はできていなくて、成長に合わせて作られていく体のしくみを、面白い!と思ったんです。その後、小児歯科の講義で中田 稔教授(九州大学小児歯科 初代教授)が、「小児歯科は乳歯の治療をする学問ではなく、いかに健全な永久歯を獲得させるかを考えて乳歯を治療する学問です。小児歯科医が診ているのは乳歯ではなくその先にある永久歯なんです。」とおっしゃっているのを聞いてとても感銘を受けました。「自分が治療した歯がいずれ抜けて無くなる」という歯科分野は小児歯科しかありません。


4歳児のパノラマ写真
乳歯はすべて萌出しているが、永久歯はまだ顎の骨の中で育っている段階

 

――「乳歯から永久歯へ」というプロセスが、小児歯科治療の原点になっているんですね。

岡:そうですね。乳歯は成長の過程ですべて抜けて永久歯に生え変わりますが、そのことで自分が治療し努力した結果が跡形なくすべて無くなるんです。それでまったくむし歯のない綺麗な永久歯列になるというのは、最高の形ではないかと自分では思っています。


治療の様子

 

――先生は研究にも力を入れられていますが、どのようなテーマに取り組まれているのでしょうか?

岡:今は、留学の時に出会った発生学(※1)に沿った研究「顔面がどのように形成されるのか」ということを主に行っています。具体的には、 「こうがい がどうやってできるのか」ということです。臨床では、「 こうがいれつ (※2)」の患者さんを診る機会もあるのですが、 こうがいれつ そのものが遺伝因子だけでなく環境因子も複雑に絡み合っているので、兄弟の中でも こうがいれつ を発症する子・発症しない子が出てきます。原因となる環境因子が何だったのかが分かれば、リスクを持っている妊婦さんにも新しい情報が届けられると思っています。他にも、外傷の患者さんを多く診るので「 こん こんまく (※3)がどうやってできるのか」や、「エナメル質形成不全」についても研究しています。


(※1)発生学…胚(動物・植物が誕生・孵化・発芽する前の組織)の発生を研究する学問

(※2) こうがいれつ …先天性異常のひとつ。妊娠初期に何らかの異常が生じ、 こうしん こうがい (口の中の天井部分)、 がくてい (はぐき)に割れ目(裂)が残ってしまった状態

(※3) こん こんまく …歯根は、歯を支える骨( そうこつ )の中に入っている部分。歯根膜は歯根と歯槽骨を結合する膜様の組織。

 

――先生が臨床で診ている症例が研究テーマにつながっているのですね。

岡:そうです。どのテーマも基礎的な内容ですが、どれも臨床で経験している問題からきっかけを得たものです。どのような治療を、どのようなタイミングで行うのか、子どもたちの成長変化にあわせて進めなければいけないので、やはり発生学研究は大切だと感じています。  基礎研究がベースとなって臨床へ活かされる研究のことを「Translational Research」と言いますが、最近は「Reverse Translational Research」、つまり臨床医の視点から、研究者にアイディアを提供して研究を進めることも注目されています。私は臨床医ですので、臨床の視点を大切にして基礎研究に関わっていきたいと思っています。学生さんにも基礎・臨床の壁に捉われず、様々な視点から歯学を探求する楽しさを知ってほしいですね。

 

――「留学」とありましたが、どちらに留学されていたのでしょうか。

岡:顔面発生学を専門として研究されている南カリフォルニア大学 Prof. Yang Chai先生の研究室に3年半ほど留学していました。長男が1歳半の時でした。


Yang Chai教授のご家族との一枚

 

――お子さんが小さい中、留学生活をスタートされたんですね。留学先での子育てはどのようにされていたんですか?

岡:まずアメリカの保育園には延長保育がなく、18時には必ずお迎えに行かなくてはなりませんでした。日本では20時まで息子を預けていたので、最初は延長保育がないことをすごく残念に思ったんです。でも、周りから、「延長保育があるから遅くまで働くんでしょ。」って言われたことで、延長保育がないことが子どもにとっては正しいんだと、延長のシステムがあるから遅くまで働いてしまうんだなと、働き方を考える良いきっかけになりました。仕事がどうしても終わらない日は、一旦息子を保育園まで迎えに行って、私の仕事が終わるまで、息子はYang Chai教授の部屋で遊ばせてもらって待っているということがありました。

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研究を通して出会った女性の先生方

――子育てに理解のある教授だったのですね。

岡:そうですね。でも、私がいた研究室が特別というわけではなく、子育てしながら研究している女性、そして、女性の教授もたくさんいらっしゃいましたので珍しい光景ではなかったと思います。アメリカでは、社会みんなで子どもを育てることが自然にできているなと感じました。ロサンゼルスの道路は段差がなくベビーカーも押しやすく、ベビーカーを押していると知らない人がドアを開けて待っていてくれたり、先にバスや電車に乗せてくれたりとたくさん助けられました。だからアメリカから帰ってきてから日本の生活に戻った時は、いろいろな意味でギャップを感じました。

――学生に教育指導する上で先生が心掛けていることやポリシーがあれば教えてください。

岡:私が学生を指導する上で自分の中で決めているのは、「ネガティブなことを伝えない。」ということです。例えば、歯科医師過剰や少子化でこれから大変になるかもしれない・・などはもってのほか、私自身も将来に不安はありません。成績が振るわない学生に対しても、「頑張らないとダメだよね。」という話で終わるのではなくて、スポ根ドラマみたいに「ここからの大逆転の方がかっこよくない?」と励ましています。

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――とてもポジティブなんですね。

岡:そうです。結局は学生さんに「岡先生って毎日楽しそうだな。」と映っていることが1番良い教育なのではないかと思っています。実際、自分の仕事をとても楽しんでいますし、身体が疲れている時も楽しいと感じているくらいですから、研究にも教育にも携われる口腔歯学部の小児歯科の教員は私にとっては天職だと思います。

――教員として嬉しい瞬間はどういった時でしょうか?

岡:教育してきた学生が歯科医師になって、もう一度出会える時が嬉しいですね。研究室に入ってきた若い先生が論文を書いて学位を取り、それから小児歯科の専門医の資格を得て実力をつけてきたときに、「おっ!」と思える鋭い質問や意見を言われたら、「このやろう!(笑)」と思いながらも成長したんだなと幸せになります。教師冥利に尽きる瞬間です。

――最後に、歯学部に興味を持っているみなさんにメッセージをお願いします。

岡:歯科医師を目指した人って何かきっかけがあったんだと思うんです。もしかしたら、そのきっかけとなった入り口はものすごく小さくて、先が見えないかもしれません。でも、歯科医療の世界には、一度入り込むとそれまでイメージしていたことをはるかに超える、想像もつかない未来が広がっています。私自身も小さい頃に家と病院がくっついている歯医者さんっていいなと思ったのが最初のきっかけでした。今は、30分以上かけて通勤する毎日ですが(笑)。一言で歯科医師といっても、選択肢が沢山あり色々な生き方を選べます。ここでは伝えきれないほど魅力ある職業だと思うので、ぜひ一歩踏み出して歯科医師を目指してみてください。

――岡先生、本日はご協力いただきまして、ありがとうございました。

岡 准教授からのビデオメッセージ

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