福岡歯科大学

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学部・大学院

松浦 尚志 准教授(現:教授)インタビュー

「患者さんのための診療、教育、研究に日々研鑽する喜び!」
2012.01.13
咬合修復学講座 冠橋義歯学分野
松浦 尚志 准教授(現:教授)

――先生のご出身は?

松浦:生まれは北九州市です。父が九州歯科大学に勤めていたので、その関係で北九州に住んでいました。それから父が福岡歯科大学の教授に就任したので、中学生のころ一緒に福岡に来ました。大学は広島大学の歯学部に入りました。

――本学に赴任するまでの経緯を教えてください。

松浦:広島大学の大学院を修了した後、医員を2年、その後広島の大きな病院に2年間勤めました。そこで専門の補綴を含めて歯科全般の診療を研修できたということが私にとってメリットが大きかったです。でも、研究者としての道がどうしてもあきらめきれなくて、思い切って2年間アメリカに行って、主に骨の研究をやっていました。その後帰国し本学にお世話になることになりました。

――福歯大に来るときに周りの人にどういう大学か聞きましたか?

松浦:いいえ、一切聞いていないです。しかし、これほど歯科臨床を専門分野にこだわらず自由にできるところだとは思っていなかったです。普通大学病院では各科がその専門分野に限定した治療を行っていきますが、時として各科の考えが微妙に異なり、患者さんの望まれるような治療結果が得られない場合も起こってくるわけです。私は補綴治療(さし歯・入れ歯の作製)が専門ですが、時として専門外のインプラントの治療を最初の検査から治療まで全て行うこともあります。勿論、気合を入れ責任を持って治療に携わりますが、この自由に伴う緊張感が臨床レベルを向上させる上で非常に重要で、若い人たちにとって、うちの大学ほど臨床レベルの向上のチャンスが多い大学が他にあるだろうかとつくづく思っています。

――先生の臨床での得意な分野などを教えてください。

松浦:大学病院には開業医で治らない患者さんが多く来院されます。例えば、どこの歯医者に行っても入れ歯が合わない方、顎が痛かったり、口が開かなかったり、ほっぺたや舌が痛い症状を持たれた方などです。その患者さんにとっては、大学病院以外にもう行き場がないので、我々は患者さんのために意地でも原因を突き止めて治していかなければなりません。それには、技術の鍛錬だけでなく、日々文献などを読んで見識を広くし研鑽を積んでいます。まあ、私の得意なことと強いていえば、このような患者さんの症状を軽減させ、治療を完了し、定期的に管理を継続している患者さんが多いことでしょうか。

――先生の研究について教えてください。

松浦:骨の中のコラーゲン量の個人差が歯やインプラントの寿命や歯を抜いた後の歯槽骨の吸収にどの程度関与しているかに興味を持って研究しています。骨基質蛋白の90%以上を占めるコラーゲンは人によって量や質が異なっていて、ミネラルの量も変化するため、骨の質的な強さを決定する重要なタンパクであることが明らかとなってきました。私の研究はまだ粗い内容なのですが、60才以上の高齢の方の下顎骨のコラーゲンと残存歯数を調べてみたところ、コラーゲンの量が多い人ほど残存歯数が多い傾向にあることがわかりました。歯の喪失にはいろいろな因子が関わっていますが、それにも関わらずこのような傾向が認められたことに今注目しています。もし、コラーゲンが骨の質に大きく関わり、歯やインプラントの寿命に関わる因子であれば、それらの将来を予測できる可能性を秘めています。そのような夢を持って日々研究に当たっています。

――本学が推進している口腔医学との関連性について先生のご意見を伺いたいんですが・・・

松浦:例えば、歯の痛みには多くの場合、虫歯や歯槽膿漏などが原因であることが多いですが、必ずしもそうとは限りません。よくよく調べてみると、痛みの感受性や神経の損傷、精神的な問題があることもしばしばです。ですから、もし全ての患者さんの歯の痛みを的確に治療することができるようになりたいならば、様々な勉強が必要となります。当然、医科との共同治療になればその病気に対する基礎的な知識も学んでいかなければなりません。ただ、勘違いしてほしくないことは、歯科医師は最終的に歯によるかみ合わせを再構築できる唯一の医師だということです。全身的な医学的知識を持つと同時に口腔領域の特殊性を正しく理解して、これからさらに進化していく医学と歯学の中で若い人たちが広い見識を持って高度な治療ができる器となれるように私も努力していきたいと思います。

――学生への教育・実習はどんなことをやっていますか?

松浦:基礎実習では3年生と4年生、臨床実習で5年生を、授業は6年生を担当しています。学生は教科書をベースに勉強しているわけですが、臨床は教科書を読むだけで完全に理解できません。勉強すればするほど疑問がわいてきます。学生はまだ臨床経験がないので疑問な点が多いのは当たり前で、「まず一つ一つの基本的知識を暗記するに留まるのではなく、その理屈や背景まで理解しようとする努力が君たちの将来を決めるんだよ。」と常日頃話しています。実習においても、講義においてもその理屈や理論的背景にふれるよう努めているつもりです。

――将来、歯科医を目指す若い学生さん達にメッセージをお願いします

松浦:勉強よりももっと大事なことは、人とコミュニケーションをすることだと思います。私は大学生の時に「学生のうちに勉強する暇があったら、たくさん恋愛して、たくさん失恋しろ!?」とある医学部の教官が授業で話していたことだけを今でも覚えています。(笑)卒後20年を過ぎて、この言葉の意味は本当に正しいなと感じています。私の恋愛経験が多かったという意味ではありません(笑)。私たちはもっと知りたい、もっとうまくなりたいという思いにかられ、一生懸命勉強しますが、もし歯科医師が人の痛みを全く理解できなかったら、患者さんが自分の痛みを全く理解できない歯科医師に治療してほしいと思うでしょうか?若い学生さんたちには、つらい目にあう経験をたくさんして、人の痛みが理解できる器になってほしいと同時に、どんどん人とコミュニケーションを取って自分が的外れな考え方に陥っていないか、真摯に人からの助言を聞けるように何事にも前向きに物事を考えることができるように成長してほしいと思います。

――今後の抱負について

松浦:現在の日本では歯科医師が過剰と言われていますが、患者さんを満足に治すことのできる歯科医師は、むしろ、不足していると思います。私たちは患者さんが治るように更なる技術や知識の習得が必要です。私は本学の教員の皆さんとともに患者さんが治るための診療、教育、研究にともに邁進していきたいと思います。大学の診療と開業される卒業生の皆さんの診療が多くの患者さんを救い続けて、福岡歯科大学が日本一の大学となることが夢です。一緒に努力していきましょう。

松浦准教授(現:教授)からのビデオメッセージ

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