福岡歯科大学

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学部・大学院

城戸 寛史 教授 インタビュー

「ゆりかごから墓場まで~インプラント教育に力をそそぐラガーマン~」
2012.06.29
咬合修復学講座 口腔インプラント学分野
城戸 寛史 教授

――先生は本学の卒業生でいらっしゃいますが、ご出身はどちらですか?

城戸:福岡県の行橋市の出身です。高校は豊津高校ですね。

――どんな高校生活でしたか?

城戸:豊津高校は田舎の高校で山の上にあるんですけど、行橋から6~7kmあったんです、しかも坂道で。それを毎日自転車で通ってましたね。よく意外に思われるんですけど、高校の時は卓球部でコンピューターや模型が好きだったんです。わりとオタクっぽい3年間を過ごしてました。(笑)

――そもそも歯学部を目指されたきっかけは?

城戸:うちの父親が歯科医師で、よくありがちなパターンで子どものころから“後を継ぎなさい”という風に育てられたので、そんなに崇高な目標があって歯科医師になったわけではないんですよ。ただ、高校の時は自衛隊に入ってパイロットになるって騒いだこともありましたね。でも、今はほんと歯科医師になってよかったと思います。インプラント治療をしていて患者さんの顔がほんとに明るいというか笑顔になってくれる瞬間が一番好きですし、モチベーションにもつながっています。

――高校時代、卓球部だった先生がラグビーを始められたきっかけは?

城戸:高校の時の卓球部が非常に弱かったんですね。大学に入った時にお世話をしてくれた先輩に「うちのラグビー部は強いよ」と言われて、強いクラブっていうのはどんなだろうとのぞきに行ったら、そのまま逃げられなくなったっていう。(笑)でも、本当に強くて、福岡大学とか福岡工業大学がいる大学のトップリーグにいたんですよ。ですから、デンタル(全日本歯科学生総合体育大会)に行くと敵なしで非常に楽しかったです。僕が入って以来5連覇したんですよ。

――ラグビー部の顧問をされていますが、部活動をしている学生さんを見ていて感じることはありますか?

城戸:自分自身が一生懸命スポーツをやってきたので、クラブに没頭している学生さんの気持ちはよく分かるんですね。僕の周りで活躍している先生方は、何かスポーツをやっていた人が結構多いものです。クラブに入ると下級生の頃は上級生への対応とか、上級生になったら後輩の面倒とか、対人関係も重要です。そうやっている中で、最初は話もろくにできないような学生さんでも、6年生にもなるとしっかりしたコミュニケーションスキルを持つようになります。歯科医師にも重要なスキルが身についていいですよね。


助教授に就任した際、ラグビー部からもらった寄せ書き入りのボール

■ 口腔インプラントへの開眼
「30年近く前、天然歯と見分けがつかない症例を見て感動したんです」

――現在は、本学教授でいらっしゃいますが卒業後はご実家を継がれなかったんですか?

城戸:そうなんです…。本学を卒業してすぐ、九州歯科大学の有床義歯の教室にお世話になったんですね。なので、仕事としては入れ歯から入ったことになります。九州歯科大学の豊田教授(故人)がフレンジテクニック(※)で有名な方でしたので、一通り勉強してから父親の病院を手伝おうかなという構想だったんですけど…。大学の仕事は毎年少しずつ変化があって楽しいので、気が付いたら九州歯科大学に15年もお世話になっていました。結局、父にはずいぶん長い間苦労かけましたが、今年の春閉院したんですよ。
※フレンジテクニックとは、口腔周囲組織と調和した人工歯排列位置を決定するとともに、その機能時の形態を下顎義歯の維持・安定に利用するための有効な手段の一つ。

――それでは九州歯科大学にいる間にインプラント学への方向性が芽生えたのでしょうか?

城戸:そうですね。東京医科歯科大学に4カ月ほどパーシャルデンチャーの特にアタッチメント類を勉強しに行きました。そこの藍教授から“インプラントの有名な先生が講演に来るよ”ということでチケットをいただいたんですね。ドイツのキリッシュ先生という方に、天然歯と見分けがつかないインプラントの症例を見せていただき、感動したんです。今から30年近く前ですから、天然歯とインプラントの見分けがつかない症例はとても珍しく、今からパーシャルを勉強している場合じゃない、これからはインプラントだ!!と。

――インプラントは年をとって歯がない方のためのものというイメージがありますが?

城戸:必ずしもそうではなくて、実は幅広い年齢層をカバーします。生まれつき歯が数本なかったり、ケガなどで歯をなくした若い女性とかも多いですね。そういう方は周りの歯はきれいなわけです。従来の方法だと両隣の歯を削ってかぶせることになります。そうすると削った歯は長い間にいろんなトラブルを起こしがちですが、インプラントだと隣の歯は一切さわらずに一本ずつ歯を復活させることができます。それは、患者さんにとっては大きなメリットですよね。

■ インプラント教育
「一貫した、生涯に亘っての教育って大事ですよね」

――本学ではどのようなインプラント教育が行われているんですか?

城戸:インプラントの教育は、僕がずっと力を入れていることなんです。1999年に本学に赴任した際に、補綴関係の諸先生方に協力していただき、卒前教育としてインプラントの実習を5年生を対象に、全国に先駆けて取り組み始めました。ここ4~5年は卒後教育もやろうと、初級コースや中級コースなどいろいろ始めており、卒業した後でも本当にベーシックなところからちゃんと教育をしています。初級コースは研修医もしくは一般治療のキャリアはあるがこれからインプラントを始めようという方が対象で、中級コースの方は少しインプラントを手掛けた方で、スキルアップをしたいという方を対象にしています。

――卒業生のフォロー体制もしっかりしているんですね。

城戸:そうですね。他にもインプラント学会の国際学会では唯一資格制度を持っているICOI学会(International Congress of Oral Implantologists)のバイスプレジデントも務めています。教育にも力を入れている学会で、フェローシップという資格試験のお手伝いを年に1回、同窓会に協力していただきながら開催しています。おかげで本学の卒業生については高い合格率を出しています。

――卒業してからも大学にサポートしてもらえるのは心強いですよね。

城戸:そうですね。本学だからこそ、卒前も含めた学部教育、生涯学習を始めとする卒後教育、卒業生の国際学会の資格取得サポート…と一貫した教育が行えるんですよ。卒業したら勉強するのは終わりではないのですから、こういった教育機関でのサポートというのは必要不可欠なんじゃないかと思います。“ゆりかごから墓場まで”と言ったら大袈裟ですが、そのくらい生涯に亘っての教育って大事ですよね。

■ 再生医学とインプラント
「異物には異物のいいところがあるんですよ」

――様々な方面でサポート役としてご活躍の先生ですが、ご自身の将来のビジョンについてお聞かせください。

城戸:最近は再生治療が非常に話題になっていて、歯を再生するとかいうことも時々ニュースになってますけど、実用化にはもうちょっとかかりそうなんですね。再生組織が生体に入ると何か問題が起きた時に、もともとあった生体と新たに再生したものの間に明確な境界がないですから、問題を取り除くときに難しいかもしれません。その点、インプラントは異物なので、ダメになったらさっさと異物部分だけを取り除くことができます。異物には異物のいいところがあるんです。むしろ、チタン製のインプラントをやる上では、欲しいのは骨なんですね。歯を再生するのに比べたら骨の再生はずっとシンプルですから、患者自身の細胞を使って骨を増やしていく新しい方法も含め、当面はその技術を高めていきたいなと思っています。

――本日は、お忙しい中ありがとうございました。

城戸教授からのビデオメッセージ

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