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学部・大学院

八田 光世 教授 インタビュー

「薬理学を通じて臨床に欠かせない力を ~これからの時代に必要な歯科医師を育成する~」
2020.5.1
(インタビュー実施日:2020.3.5)
細胞分子生物学講座 分子機能制御学分野
八田 光世 教授

――まず先生の出身について教えてください。

八田:出身は北海道です。札幌市から1,2時間ほど北のほうに行った日本海側の小さな町の出身です。今は合併して石狩市ですが、昔は村でした。
 

――北海道から福岡へいらしたのですね。

八田:そうですね。ただ、北海道からアメリカへ留学し、熊本に帰国して、それから福岡に来たという感じになります。
北から南では、気候はもちろん食べ物も違いますね。特に食べ物に関しては全く違うというような感じなので…九州のほうが日本酒を中心にお酒もおいしい気もします。
 

▲バングラディシュから来た学生にもらった縁起のいい飾り

――休日は何をして過ごしていますか?

八田:家族と過ごすことが好きです。アメリカに留学したときから料理をするようになって、今もたまにですが休日とかにするようにしています。メニューは、ローストビーフなど基本的にお肉を使ったものが多いです。アメリカにいたときも、バーベキューやリブを焼いていました。それ以外にも炒飯やカレーとかは、今は私の担当になっていますね。
あとは小さいころから昆虫採集が好きで、息子が小学生のころは週末になると車であちこちに出かけ一緒に昆虫採集をしていました。九州は山に入ってもクマが居ませんので(笑)まったく安心というわけではないですが、北海道だとヒグマがいるので。

――大学時代はどのように過ごされましたか?

八田:基礎系の科目が好きで、その勉強をしたり、担当教員と仲良くなっていろいろ話を聞いたりとかしていました。あとは臨床に上がってから入れ歯や銀歯を作ったりすることが面白いなと思っていました。私が学生の頃は、自分で患者さんを連れてきて診療するというようなこともあったりして。妻にも、当時患者さんになってもらって、歯の根の神経を治療したり銀歯を作ったりしていました。今は全然診療をしていませんが、それら治療した歯が20年以上経ってもまだ大丈夫というのがちょっと自慢ですね。
 

――素敵なお話ですね。そんな先生が今の分野に進んだきっかけは?

八田:実は、非常にその記憶が曖昧なんです。臨床の道へ進もうと思い、はじめは口腔外科などを志望していましたが、大学院の紹介が学内にあって、それを見たときに薬理の研究が面白そうだなと思ったんです。そして薬理の教授に会いにいったときに教授から「八田くん、研究はロマンだよ」ということを言われて(笑)その言葉しか覚えてないんですけれど、そこから大学院へ進学して、ずっとこの道を進んでいる感じですね。


――先生の専門分野をわかりやすく、教えて下さい!

八田:教育としては「薬理学」というものになります。薬理学は非常に幅が広くて、基礎系の科目として、薬物が生体、体の中でどのように作用して効くのかであるとか、体に入ってきた薬物がどういう運命をたどるのかというようなことを学ぶ学問になります。
例えば、薬を飲むと『効いている』と思いますよね。熱さましの薬を飲んで、熱が下がる。熱が下がっているときは薬が体に効いているのですが、それはずっと続くわけではなくて、熱が上がってくるとやっぱり薬が切れてきたなという感覚になると思います。それは、体が入ってきた薬(化学物質)に対して、代謝して体外に出していくというようなことも一緒に行っているからなんです。そうした薬と体の両方向の働きというか、作用というようなものを勉強していきます。
 

――なるほど…その薬理の知識が歯科にどう生かされていくのでしょうか?

八田:歯科医師が歯科治療の際に薬を処方することは当然ありますが、今、日本は超高齢社会で持病を持ち、医科から処方された薬を飲んでいる患者さんが多くいると思います。実際に自分で治療する時に、医科の分野での薬であっても、やはり歯科医師も知っていなければ、それらの薬を服用している方の特徴や注意点を踏まえながら治療することはできません。この分野は薬理学の知識はもちろんですが、全体的な医学の知識も望まれるのではという風に思います。

――そうした薬理学を勉強する上で学生さんに意識してほしいことはありますか?

八田:少しでもコツコツ勉強するということを続けてもらいたいなと思いますね。 理想的になるかもしれませんが、暗記というよりは理解ができるといいですね。薬理は薬の名前を暗記して覚えるだけでなく、理解をしていると暗記自体も助けられるので、“理解をしていく”という形で勉強できる学生に向いている気がします。例えば、薬物の効果や作用メカニズムについて、解剖学や生理学で習った生体の構造・機能から組織学や生化学での細胞や生体分子レベルの知識へというふうに深く入っていく見方をしてつなげられるように意識していければいいと思います。微生物学や病理学とのつながりも同様です。
 

――先生の主な研究内容をわかりやすい形で教えていただけますか?

八田:研究テーマとしては、①真核細胞における転写制御メカニズムの解明、②ヒストン/DNAの化学修飾とクロマチン構造制御に関する研究、③上皮細胞のフェノタイプ転換を制御する分子機構に関する研究と大きく三つに分けられます。ですが、これらは遺伝子の発現制御を基軸としていて、すべて繋がっている感じではあるんですけど。 DNAに書かれている情報を、遺伝子といいます。その遺伝子が読まれて、人や動物、植物といった生体の形ができていきます。人の体でも骨や心臓、いろいろなものがありますが、結局は一つの受精卵からでき、様々な違いが出てくるのです。なので、そういった違いはどういう風に起こるのかいうところに興味があります。DNAはヒストンというタンパクにぐるぐる巻きになり細胞の核の中に入っています。 それぞれの細胞で必要とされる遺伝子の情報は読み取られ、必要とされていないものはしまわれた状態になります。それを制御しているものが、エピジェネティクスとかエピジェネティック制御というもので、DNA やヒストンのメチル化などの化学修飾が印として働き、遺伝子を選別することが分かってきています。そういったエピジェネティック制御と細胞の特性について、その分子メカニズムを明らかにしたくて研究を進めています。

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――これからどんなことをしたいですか?

八田:今後は、今行っている研究をさらに進め、口腔歯学部にいるので口腔に関わるところに入って行けるといいかなと思います。新しく歯を作るであるとか…そうした非常に難しいところにも繋げていけたらいいと思います。


――学生になにかメッセージをお願いします!

八田:うまく物事が進む時もありますし、くじけそうになる時もあると思いますが、常に前進し取り組んでいく。そういう姿勢を持ってもらいたいです。歯科医師の仕事って非常に重要なものだと思うので、しっかり勉強をして取り組んでほしいなと思います。

 

――八田先生、ありがとうございました!

八田 教授からのビデオメッセージ

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