福岡歯科大学

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学部・大学院

畠山 雄次 教授 インタビュー

「解剖学教育を通じて、学問の食わず嫌いをなくす」
2019.05.07
生体構造学講座 機能構造学分野
畠山 雄次 教授

――本日はよろしくお願いします。まずは先生のご経歴をお願いします。

畠山:東北の宮城県出身で、高校時代まで気仙沼市にいました。大学は東北大学歯学部に進学し、大学院を経て、小児歯科学講座の助教として勤めました。その後、2度の留学を経て、本学へ赴任しました。

――ご出身地である気仙沼は海の幸が豊富と伺っています。

畠山:魚はおいしいと思いますよ。フカヒレも有名ですね。土地柄のせいか、僕が食いしん坊だったもので、食べ物をおいしく食べたいという思いで歯科医師を目指しました(笑)もちろん、人と関わりのある医療に携わりたいとも思っていました。

――大学卒業後はすぐに研究の分野に進まれたのですか。

畠山:まずは東北大学小児歯科学講座に所属して、臨床と研究の両方に携わりました。子どもの患者さんで前歯の治療をして、次の来院の時、歯がきれいになって笑顔で微笑んでもらえた事が忘れられません。今は研究主体ですが、臨床も研究も科学的に物事をとらえて分析して対策を施すという一連の流れは同じです。

――研究テーマについてはいかがでしょうか。

畠山:大学院生の時は、歯根(※1)の形成過程を研究していました。学生の時、小児歯科の講義を聴いて、歯の萌出(※2)に関連して、歯根の形成過程に興味を持ったのがきっかけでした。ラットを用いた研究では、生理的メカニカルストレスに対応してコンドロイチン硫酸という軟骨に豊富な細胞外基質が歯根に出現する事が分かりました。この研究結果から派生して、現在は軟骨の形成、また同じ硬組織の中でも一番硬いエナメル質の形成をテーマに研究を進めています。

(※1)歯根・・・歯の下にあり、歯槽骨に埋まって見えない部分の事。口腔の中に露出している部分(歯冠)と区別する。
(※2)萌出・・・歯が生えること。
 

――研究を行うにあたって、2度留学されていますが、経緯を教えてください。

畠山:当時、軟骨形成に関する研究をしていたところ、大学の先生から、アメリカで同じような研究テーマを扱っているラボを紹介されました。留学先は1回目がメリーランド州にある国立衛生研究所、2回目がカリフォルニア州の南カリフォルニア大学でした。アメリカは休日が少なく、平日は朝から晩まで仕事をしていましたが、日本に比べると治安の問題があったので、決められた時間には帰っていました。


留学先での研究風景

――英語の学習についてはいかがでしたか。

畠山:留学する前に一度下見として現地に行きましたが、その時、ニューヨークのベーグル屋で「お前の英語は分からない」と言われ、ショックを受けました。帰国後はネイティブの先生のもとで英語を2~3ヶ月勉強してから、留学しました。やはり、語学は現地での生活の中で覚えることで各段に上達すると感じました。日頃、英語の論文に目を通しますが、本当の意味で論文を読めるようになったのも留学してからだと思います。

――貴重な体験をされたんですね。次に本学に赴任されて、現在、先生のご担当の授業について教えてください。

畠山:基礎医学教育として、解剖学の講義と実習を受け持っています。解剖学は人体の基本なので医療系であれば必ず勉強する学問です。全身の解剖をあまねく行うことによって口腔医学の基礎を作るということを念頭に置いています。

 

――授業では工夫している点があるそうですね。

畠山:僕は『疑似的電子黒板』という風に呼んでいますが、タブレット型パソコンを利用して図や写真などの教材をスクリーンで投影し、学生にも同じ教材のプリントを配布しておきます。授業では、タッチペンを使って、図や写真に関する説明をタブレット上に直接書き込めば、スクリーンにも同じように表示できるように設定しており、学生も手元の教材と関連づけてノートをとることができるので、理解が深まると思います。以前、非常勤講師の先生がOHPを使って、同じような形式で講義を行っていた事から思いついたアイデアですが、タブレット型パソコンを利用することでより明るくきれいに表示できるようになりました。


タブレット型パソコンとタッチペンを使用し、タブレット上に記入したことがスクリーン上にも投影される

――学生にも好評のようですね。先生が教育する上でのモットーは何でしょうか?

畠山:これは子どもの例えかもしれませんが、嫌いな野菜もおいしいという事が分かれば食べると思うんですよね。多くの子どもが食わず嫌いのまま、「野菜はおいしくない」という先入観を持っていると思います。学問の入り口も、まずは先入観を取り払うことが大事です。一見難しそうな内容でも学問には法則や体系づけられた物があり、それが分かれば、あとは原理原則を応用することで学びも楽しくなってきます。一見、解剖学って暗記でつまらないという印象を持たれがちですが、「実は自分の身体についての話のことでもあるんだよ」という風に講義をすると学生は熱心に話を聞いてくれます。

――先入観を取り払って、学問の楽しさを伝えるんですね。

畠山:留学していた時に思ったのですが、楽しくなければ人間続きません。壁にぶち当たることも当然ありますが、過去に面白かったという体験があれば、壁を乗り越えようという風になるんですね。だから講義を行う際にも学生にはまず楽しい、面白いということを強調します。それと留学先のラボでは、何か困ったことがあったらチームでやろうよ、という具合に助け合い、支え合うことが、とても良い経験になりました。同級生同士で教えたり、先生と学生のチームで協力したりしながら授業を進めていきたい、と考えています。


学生からの質問を受け親身に対応

 

――最後に歯科医師を目指す学生へのメッセージをお願いします。

畠山:歯科医師は歯科医療に従事する歯医者さんのイメージがあると思います。その他にも県庁や厚労省といった行政に携わったり、国内外で基礎研究をやったり、とにかく色々な可能性があります。しかし、先入観があるとその可能性を諦めてしまう場面がでてきますが、諦めなければ口腔領域を支えるエキスパートとして多方面で活躍できる場が待っています。医療現場に限らず、食べ物をおいしく食べられるという幸せをサポートするのが歯科医師の醍醐味です。ぜひ、本学から歯科医師を目指してください。

――畠山先生、ご協力ありがとうございました。

畠山教授からのビデオメッセージ

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