福岡歯科大学

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学部・大学院

成長発達歯学講座について

講座概要

1973年の大学開学と同時に開講された小児歯科学講座と歯科矯正学講座ならびに 1991年に開設された高齢・障害者歯科が分離され、そのうちの障害者歯科が一緒になり2001年4月に成長発達歯学講座 (Department of Oral Growth and Development) として統合されました。

主任教授挨拶

成長発達歯学講座矯正歯科学分野 教授 玉置 幸雄

成長発達歯学講座は、成育小児歯科学分野、障害者歯科学分野、矯正歯科学分野の3分野で1つの講座となっています。治療は、低年齢から成人期以降までの幅広い年齢を対象とする講座ですが、各分野のスペシャリストを目指すスタッフが多数在籍し、成長・発達に関連した異常とその治療および予防について研究、教育、診療を行っています。それぞれの分野において、基礎系あるいは臨床系の研究テーマをもつ大学院生も多く、リサーチマインドをもった歯科医師の養成に努めたいと考えています。

それぞれの名称をクリックすると、詳細情報に移動します。

成育小児歯科学分野

本教室は1973年(昭和48年)に西日本地区で初めての小児歯科学教室として開講しました。この時期は、第2次ベビーブームで小児人口が増加している一方で、小児への口腔保健活動は始まったばかりで不十分であり、齲蝕が蔓延し「虫歯の洪水」時代と呼ばれ、小児歯科医療は、齲蝕治療が中心でした。しかし現代においては、歯科医療が果たす役割は拡大し、様々な専門分野が確立されてきたことを背景に小児歯科に求められる診療も多様化してきています。
診療においては、齲蝕治療だけでなく、咬合誘導や外来小手術症例にも広く対応しています。顎骨腫瘍の摘出、埋伏歯の萌出誘導など、口腔外科や矯正歯科との連携症例も多く、質の高い小児歯科医療の提供に努めています。また、歯科の専門科だけでなく、小児科や耳鼻咽喉科との連携も大変スムーズです。本学が推進している「口腔医学:口腔の健康から全身の健康に貢献する」を基本理念として診療を行っています。
卒前教育としては、3学年後期より小児歯科学の修学が始まります。講義や実習を通して、能動的に学べる力を身につけてもらいたいと考え、学習方法にも工夫を行っています。

卒後教育は、小児歯科専門医取得を目指す医局員達の専門教育に力を入れており、2015年以降13名が専門医を取得しました。一方で、専門医ではなく、日本小児歯科学会が新しく導入した、小児歯科認定医の取得を目指している医局員もいます。短い期間でもGeneral Dentistとして、小児歯科の基礎を学ぶことができるような生涯研修にも取り組んでいます。

研究活動では、歯をはじめとする顎・顔面発生研究を、実際の臨床において遭遇する疾患と関連付けたTranslationalな発生学・再生医学を基盤とする基礎研究や、口腔機能発達不全症に対する診断方法を探索する臨床研究を大学院生とともに進めています。

専門分野間の連携が緊密な本学の特徴を活かし、歯科医療における教育、診療、研究の発展に寄与できるような人材を育成したいと考えています。

 

研究テーマ

歯の形成不全と全身疾患との関係についての研究

歯を形作るエナメル質と象牙質は、萌出前の顎骨の中で形成される。エナメル質、象牙質形成は、形成時期の全身状態の影響を受け、形成不全や萌出障害といった様々な病態を呈する場合がある。我々は、エナメル質、象牙質形成に関わる因子が、全身のどのような機能と関係しているか、またこれらを予防する方法を探索することを目的とし、マウスを用いた基礎研究、病理組織切片を用いた臨床病理学的研究、3次元バイオプリンターを用いた再生工学を基盤とした研究などを展開している。

歯面塗布材のエナメル質応用を試みる研究

齲蝕予防に重要なエナメル質の耐酸性能については、個体差が存在する。つまり、フッ化物塗布や小窩裂溝予防填塞といった一般的な齲蝕予防法に加え、エナメル質を強化するという一歩踏み込んだ予防方法の確立も重要である。現在、臨床において象牙質知覚過敏抑制剤として応用されている薬剤をエナメル質へ応用できる方法を探索し、エナメル質の個体差に合わせた齲蝕予防法の確立を目指している。

口腔機能発達不全症の新しい診断方法を開発する研究

 近年、口腔習癖を原因とする口唇閉鎖機能不全や舌突出癖が、小児の口腔機能の獲得を阻害する因子として注目され、「口腔機能発達不全症」が新しい疾患概念として定義された。我々は、病態評価が難しいこの疾患に対し、「発音時の舌のポジション」をEPG(Electropalatography)と呼ばれる装置を用いて客観的に評価する方法の確立に取り組んでいる。

成育小児歯科学分野 所属教員

     
教授 岡  暁子
講師 柏村 晴子
助教 熊谷 徹弥
助教 石井 華子
助教 中嶋 真理子
助教 三輪 佳愛

障害者歯科学分野

平成3年4月福岡歯科大学付属病院(現 医科歯科総合病院)に、心身に障害があり、歯科治療が困難な人たちを対象として高齢・障害者歯科が開設され、平成4年4月から学生教育も行ってきました。
平成13年4月の講座再編に伴い、障害者歯科学分野として成長発達歯学講座の一分野となりました。地域の障害者歯科医療を担う歯科医師を育てることを目標に掲げ、講義のみならず、診療参加型臨床実習にも力を注いでいます。

研究テーマ

骨の再生

スフェロイド培養した骨芽細胞の骨分化誘導を促進する因子や細胞間相互作用について解析しています。

口腔内の微生物に対する免疫応答能を獲得する機構

口腔内に存在するPorphyromonas gingivalisやCandida albicansに対する免疫応答能を宿主である個体はどのように獲得するのか、免疫応答は生体にとって常に宿主に有利にはたらくのかなどについて解析しています。

障害児・者の歯科口腔保健

特別支援学校の児童・生徒や障害者施設利用者を対象に歯科検診やアンケート調査を実施し、現状を把握するとともに今後の障害者歯科医療のあり方について検討しています。

歯科診療の受け入れに至る過程

知的障害や発達障害を有する患者は、一般に歯科治療において困難に直面することが多いとされています。とくに、自閉スペクトラム症では、4割以上が歯科治療の際に全身麻酔や静脈内鎮静法のような薬物による行動調整を必要とすると報告されています。しかし、このような患者であっても、薬物を使うことなく歯科治療を受け入れるように行動変容させることが可能なケースがあります。それを達成するための方法の確立に向けて研究を行っています。

障害者歯科学分野 所属教員

教授 森田 浩光
講師 田﨑 園子
講師 天野 郁子
助教 尾崎  茜

矯正歯科学分野

当分野は昭和48年、福岡歯科大学設立と同時に歯科矯正学講座として誕生いたしました。以後40年以上にわたり、臨床、教育、研究を三本柱に、医の精神にのっとり高い倫理観と教養を身につけ、専門知識、専門技術を修得することにより、地域社会へ貢献できるよう精進してまいりました。平成13年、新たに成長発達歯学講座矯正歯科学分野と改名し、新たな時代の歯科医師に欠くことのできない知識、技術、人間性を身につけるべく日々励んでいます。

研究テーマ

矯正歯科治療の新しい評価法に繋がる研究

不正咬合の程度を数値化し客観的に評価する指標(Dental Aesthetic Index: DAI; Peer Assessment Rating Index: PAR Indexなど)と、患者の口腔に関連する生活の質(Quality of Life: QOL)を評価する指標(General Oral Hearth Assessment Index: GOHAIなど)という2つの指標を用いて、矯正治療の新しい評価法を検討している。

顔の形の分類をもとにした診断補助システムの構築

矯正治療では、個々の顎顔面形態に合わせた歯の位置の設定や骨格的なコントロールを行うことが重要である。このため、成長期の矯正治療計画を作成する際に必要となる個性長予測、将来的に外科的矯正治療となる可能性の高い症例のスクリーニング、顎変形症患者の術後の側貌形態予測などを初診時に行える診断補助システムの臨床応用が望まれる。本研究では、新しい分類の概念として登場したニューラルネットワークの一つである自己組織化マップ(SOM)を用い、顎顔面形態の多様性を考慮し、視覚的な分類に基づいた予測やスクリーニングを行うシステムの構築を行っている。

口蓋床型装置を用いた術前顎矯正治療による歯槽形態変化の分析

口唇・口蓋裂患者では、哺乳改善、舌の裂への嵌入防止および口蓋裂部成長誘導を目的として出生直後から口唇形成手術までに術前顎矯正治療が行われている。我々は、2002年より福岡大学病院形成外科と連携し術前顎矯正治療を行っている。術前顎矯正治療は口蓋床型装置を用いて行い、治療前後の口腔模型を使用し非接触型三次元計測装置を用いて治療による歯槽形態変化を比較検討している。

創傷治癒モデルを用いた口蓋裂術後瘢痕形成に対する薬剤的コントロール

口蓋裂患者では幼少期に口蓋形成手術が行われるが、手術侵襲や術後の治癒過程で生じる瘢痕組織が上顎骨および上顎歯列歯槽部の成長発育に抑制的な影響を与えることが知られている。本研究では、bFGFやTGF-b3などの薬剤投与による瘢痕形成の抑制効果や、TRPチャネルの発現が創傷治癒に及ぼす影響を検討し、瘢痕形成の抑制と顎発育抑制の緩和をはかる新しい口蓋裂治療の確立を目指している。

歯周病原菌由来TLRリガンドによる糖尿病性腎症の発症機構とその予防について

近年、歯周疾患を有する糖尿病患者が腎症を合併する危険性が高いことが問題視されている。当教室はこれまでに、糖尿病のヒトおよびマウスの腎糸球体毛細血管内皮細胞が、通常は発現しない自然免疫受容体toll-like receptor (TLR)2とTLR4を発現すること、糖尿病マウスは口腔細菌由来TLRリガンドを投与されると早期に腎症を合併し寿命が短縮することを報告した。それは口腔細菌が糖尿病において腎症を誘発する可能性を示唆する。本研究では、歯周疾患に起因する血中の口腔細菌由来TLRリガンドが糖尿病環境下で引き起こす腎症の発症機構、また、この糖尿病性腎症を引き起こす相対危険度と疫学的交絡因子を明らかにすることを目的とし、研究を行っている。

小児血液腫瘍に用いる化学療法薬が歯に与える形成障害について

小児血液腫瘍に対する化学療法は治癒率を飛躍的に向上させたが、その後の副作用の問題を新たに提起することとなってきた。歯の形成期に投与したアルキル化剤の薬用量・投与時期・併用する療法と歯の形成異常(矮小歯化、先天欠如、歯根形成不全)の程度との相関性を詳細に検討し、他剤を用いた場合と比較する疫学的調査の蓄積、ならびにアルキル化剤による歯の形成異常に対する予防的解決法を見出していく。また、薬剤が歯だけではなく、骨格にも影響を与えていないかも同時に調査していく。

矯正歯科学分野 所属教員

教 授 玉置 幸雄
講 師 阿部 朗子
講 師 梶原弘一郎
助 教 石井 太郎
卒後助教 中嶋 宏樹
卒後助教 國見 亮太

研究業績