耳寄りな話<スポーツ歯科>

☆スポーツでの口のケガを予防・治療するスポーツ歯科 Q&A
Q:スポーツ歯科ってなんですか?

A: スポーツ歯科(学)とは、(1)正しい栄養摂取と体力作り、健康の維持・増進のための歯と口の健康管理 (2)アゴや口におけるスポーツ障害の安全対策とその指導、およびスポーツ外傷の治療 (3)運動能力の向上を歯科学的側面からサポートすることを目的とした歯科医学の一分野です。
 福岡歯科大学医科歯科総合病院 スポーツ歯科では、顎口腔領域のスポーツ外傷(唇、舌、歯肉が切れた、歯が折れたり抜けた、アゴの骨折、アゴの関節が痛くなった等)の治療、その予防のためのマウスガードの作製やスポーツ歯科教室(往診を希望される場合もご相談に応じます)を行っています。
Q:アゴや口の中の健康とスポーツって関係あるのですか?

A: お口の健康と全身の健康は結びついています。むし歯、親知らず、歯周病による痛みがあると集中力が低下しますし、同様にバイ菌が感染するとアゴがひどく腫れたり、最悪の場合全身にバイ菌が回って死に至ることもあります。また、むし歯や歯が抜けたままにしておく事による、かみ合わせの崩壊は、スポーツ中の衝突時に、歯やくちびるのケガあるいは骨折が起こりやすくなるとともに、姿勢が悪くなったり、静的筋力の低下や安静時の平衡機能低下につながるとも言われています。
Q:スポーツで口のケガなんて多いのですか?

A: 日本スポーツ振興センターの報告では、学校管理下(保育所、幼稚園、小学校、中学校、高校、高専)における障害見舞金の給付件数の中で、「歯牙障害」の割合は、平成10〜16年度で28.4〜40.2%を占めています。つまり、学校でのスポーツに関連した体全体のケガの中で、実に約3割が歯のケガである訳です。スポーツによる口のケガは決して少なくありません。
Q:スポーツで口のケガを予防する方法はありますか?

A: まず、歯科で口の中をチェックし、口の中の健康を保つことが重要です。むし歯、歯が抜けっぱなしなどによってかみ合わせが悪くなると思わぬ大ケガにつながる事があります。また、特にコンタクトプレーが多いスポーツには、衝撃から歯やアゴを守るマウスガードがお薦めです。
Q:マウスガードってなんですか。

A: マウスガードはスポーツで使うお口のプロテクターです。「マウスピース」、「マウスプロテクター」とも呼ばれていますが「マウスガード」というのが最近は一般的な呼び方になっています。マウスガードは上アゴに装着します。最も一般的な材料(歯科医が作製するもの)はエチレン酢酸ビニル共重合樹脂というゴムの様な軟らかい材料です。
 マウスガードの機能は、(1)歯や唇、舌のケガの予防、(2)アゴの骨折の予防、(3)顎関節のケガの予防あるいはアッパーカットを受けた時の(4)脳振盪の予防効果もあるという報告があります。また、思い切ってプレーできるという(5)心理的効果も期待されています。
 マウスガードは市販の物と歯科で作製する個人専用の物(カスタムメイドマウスガード)があります。市販の物は装着感が悪かったり、しゃべりにくいことや正しいかみ合わせの調整が難しく、不適切な市販のマウスガードにより、よけいにケガを起こし易くなる事もあります。一方、カスタムメイドマウスガードは歯科医院でアゴの型を取り、個人専用のものを作りますので、適正なかみ合わせの調整が可能で、市販のものより装着感、発音しやすさに優れ、スポーツの種類や選手の年齢、スキルに応じた外形や厚みなどの設計変更が可能です。できれば歯科医が作製したカスタムメイドマウスガードがお薦めです。

カスタムメイドマウスガード
 
Q:どんなスポーツでマウスガードを使うのですか?

A: コンタクトスポーツで使用すべきです。また、コンタクトプレーがほとんどなくても突発的な事故からの防護目的で使用した方が良いスポーツもあります。

マウスガードの使用が推奨されるスポーツ

格闘技系:
ボクシング、キックボクシング、空手、マーシャルアーツ、テコンドー、相撲、レスリング、他

コンタクト系:
アメリカンフットボール、ラグビー、アイスホッケー、インラインホッケー、男子ラクロス、水球、モトクロス、他

非コンタクト系(突発的事故が少なくない):
女子ラクロス、ハンドボール、サッカー、フィールドホッケー、スキー、スケート、野球、ソフトボール、乗馬、自転車、ウエイトリフティング、綱引き、他
Q:マウスガードを使うと運動能力が上がると聞いたことがあるのですが本当ですか?

A: スポーツには種々の運動要素が混在しています。静的な運動(アーチェリー、弓道など)と動的な運動(陸上100m走などの走ることが多いスポーツ)、持続的な運動(重量挙げでバーベルを挙げた後の静止時)と瞬発的な運動(スタートダッシュ)と様々です。この時すべての運動で咬んでいるかというとそうではありません。動的運動や瞬発的な運動は咬みしめない事が多いのです。また、最大筋力を発揮する時のアゴの位置は、咬みしめる人、アゴを前に突き出す人、唇を咬む人、大きく口を開ける人、口を開けて叫ぶ人など、これも人によって様々です。ですから、競技時に食いしばったりや軽く咬んだりしない人あるいは運動(スポーツ)は、マウスガードの競技能力向上の効果は期待できるか疑問です。

 現在、マウスガードの使用により、マシーンを用いた筋力トレーニングで、筋肉の共縮を起こすような低速度の静的筋力向上において効果があったという報告や、適切な顎位で咬みあわせの支持があると体位の安定や静止に役立つ(アーチェリー、弓道、ライフル射撃など)という平衡感覚の向上の報告はあります。

 しかし、すべてのスポーツ競技者がマウスガード使用により静的な筋力や平衡感覚の向上が得られる訳ではありません。個人差があり、無理な咬みしめにより競技能力にマイナスの効果が出る場合もあります。運動時に咬みしめないタイプの人が無理に咬もうとすると柔軟性の低下、競技スピードの低下、呼吸リズムの乱れにつながる事があります。

 
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