福岡歯科大学

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学部・大学院

岡田 賢司 教授 (現:福岡看護大学 教授) インタビュー

「未来ある子ども達の健康と笑顔を守るために
~ワクチンの普及啓発に力を注ぐ疾患予防のプロフェッショナル~」
2013.06.28
総合医学講座 小児科学分野
岡田 賢司 教授 (現:福岡看護大学 教授)

☆ロケットを飛ばしたい!そんな技術者になる夢をお持ちだった小児科医・岡田教授に今回はインタビューをお願いしました。

――ご出身は?

岡田:学生時代は鹿児島にいましたが、それ以外は福岡にいることが多かったです。

――どのような学生生活を送っていましたか?

岡田:中学時代からずっと卓球をしていましたので、大学でも卓球部に入りました。私が入学した頃の卓球部は結構強くて、九州・山口や西日本、医歯薬学部の大会などで、いいところまでいきました。大学には医学部チームと本学チームがあって、私は医学部チームに所属していましたが、当時は本学チームより強かったこともありました。


インタビューを受ける
岡田教授

――今も卓球をされているのですか?

岡田:卒業後はあまり出来ませんが、九州大学では医局対抗の試合がありましたので、それに出場するくらいでした。その他では、九州・山口の学会に合わせて開催される卓球大会に参加し、昔の仲間と親睦を深めています。

――それは楽しいでしょうね。特に先生は強豪選手だったから。

岡田:昔は“名前”で勝てることがありましたが、継続して練習している人には、とても敵いません。“継続は力なり”です。

――他にストレス解消のために何かされていますか?

岡田:昔のことですが、町内の少年ソフトボールのコーチをやっていました。息子がチームに入っていたので引き受けたのですが、子ども達が持つ宝の原石を、地域全体が一つになって磨いて輝かせることで、強いチームづくりに繋がりました。本当に親子ともども貴重な体験が出来たと地域の皆様に感謝しています。


小児科診察室

――小児科を選ばれた理由は?

岡田:私は子どもの頃よく病気になって小児科の先生に診てもらっていましたので、医者と言えば小児科医のイメージがありました。小児科を選んだ理由をかっこよく言えば、未来ある子ども達の健康を守るため、そして障害を受けた子ども達が立ち直るために必要な力をサポートしたいと思ったからです。学生の頃はまだ内科とか外科とかどんなものか分かりませんでしたので、本音は、あまり難しいことは考えず、子ども達と寄り添って、一緒に遊ぶことができるのは小児科だなと思ったからです。


――ご専門はワクチンの臨床研究とお聞きしていますが、ワクチン研究を選ばれた経緯は?

岡田:当時の九州大学小児科では、卒後2年間の研修で色々な難しい症例を指導医のもとで主治医として診療にあたり、卒後3年目から専門分野に進んで勉強しました。私が2年間の研修を終えようとしていた時に、光栄にも当時の教授から大学院に進学して細菌学(感染症学)を学ぶよう勧められたことがきっかけです。


――最も力を入れている取組は?

岡田:20世紀は治療の医療、21世紀は予防の医療と言われています。世の中には数多くの病気がありますが、ワクチンで予防できる病気もあるのです。「予防できる病気は予防しましょう」ということですね。ですから、ワクチンに関する正確な知識の普及啓発に力を入れています。

――ワクチンについて教えて下さい。

岡田:薬は病気の人を治すためのものですが、ワクチンは病気の人だけではなく健康な人が病気を予防するためのものです。そのためワクチンは一度世の中に出てしまえば、患者さんだけのものではなく、「社会(全体)のモノ」になります。例えば、新型インフルエンザが流行った時、何故早くワクチンを作らないのか、全国民に早く接種して欲しいというように社会から望まれました。健康な人達もその出現を望んでいるところに大きな社会的意義があると考えています。

――社会の動きが重要になるのですね?

岡田:日本ではワクチンだけではなく、多くのものに関して安全性が最も重視されています。とても大切なことですが、この結果、世界標準と比較すると、髄膜炎を予防できるHibワクチンのように20年も前から世界の多くの子ども達が接種しているワクチンが使用できない状態が続きました。20年ものワクチンギャップがあった訳ですが、それが、保護者の方から、“日本の子どもにも接種できるように”との強い要望が社会の大きな動きとなり、最近、多くの海外で使われているワクチンが、日本でも接種できるようになりました。社会が国を動かしました。私達小児科医も、少しお役にたてたかなと思っています。


――日本ではどのようなワクチンがあるのですか?

岡田:国内では「定期のワクチン」と「任意のワクチン」とがあって、前者は法律(予防接種法)によって国が勧めているワクチンで、地方自治体から保護者に案内が届き、決まった年齢枠で受けることが勧められています。後者は接種を受けたい人がご自分の意志で受ける(定期ワクチン以外の)ワクチンで、例えば、水ぼうそうやおたふく風邪などがあげられます。情報社会といわれる今日ですが、ワクチンの正確な情報が残念ながら保護者の方に十分届いておらず、接種が普及しているとはいえません。このため予防接種の意味合い、正確なワクチンの効果と副反応を広く一般に伝えることが、私達小児科医の大切な役割だと思っています。私は厚労省の予防接種審議会の委員、福岡県や市の予防接種委員を務めていますが、十分な情報が得られないためワクチン接種をためらわれている方などもおられ、正確な情報を社会に知らせることの重要さを痛感しています。任意のワクチンが、全て定期のワクチンになれるよう、多くの関係者と議論しています。

――ワクチンの予防効果と副反応

岡田:特に日本では「安全性」に関して“ゼロリスク”が求められます。体の中に異物を入れるため、多くの人には何の影響もないけれど、一部の人にはたまたま何かの理由で、わずかな割合で影響が出ることもあります。このため、ワクチンを接種するとどのような副反応が生じるのか、どのような症状が起こるかなど、できるだけ詳しく説明することが医師としての努めですし、副反応が生じる機序の解明、より安全なワクチンを目指して研究・開発に日々努めています。


  • 待合室

  • 処置室

――ワクチンを接種するか否かの判断は難しいですね。

岡田:子どもへのワクチン接種は、最終的に保護者が判断しなければなりません。このため、私達にできることは、診療時に直接お話しして、保護者の方が判断できる情報を提供することです。また全国の医師向けの講演、市民公開講座やパンフレットなどの執筆も、最終的には保護者の皆様への情報となりますので、こうしたことにも力を入れています。

――ワクチンについての正確な知識(情報)と理解が重要なのですね。

岡田:「副反応もゼロではないけれど、ワクチンで予防できる病気は予防接種をしましょう」ということを、多くの保護者の方にご理解いただくことが私達の願いです。最初に偏った情報を聞くと、怖いというイメージが記憶として残り、それがその方の基本になります。一旦そうしたイメージが定着すると、それを取り払うことは非常に難しくなります。そのためには一人でも多くの人に、先ず初めに効果と副反応についての正確な知識を持って頂くことがとても重要だと考えています。


授乳スペース

――本学の小児科の特色は?

岡田:先ほどお話しした感染症の予防(ワクチン接種)と小児神経疾患として最近社会で問題になっている発達障害児への対応に力を入れています。
発達障害については、専門医が少なく、患者数が増加していることから医療機関にかかっていない子ども達も多く、専門病院の予約は2~3か月待ちの状況です。一般の小児科医院ではスクリーニング(選別試験)は出来ますが、積極的に介入して専門的な検査や治療までは行われていません。発達障害に対する社会の認識もあがっており、また親側のニーズとしても小児科にとって必要な医療と思っております。

待合室

――診療で大切にしていることは?

岡田:子ども達の気持ちを尊重することが大切だと思います。実は私は、基礎は別として、日常臨床では医学や歯学は理科系ではなく文科系だと思っています。子ども達が言ったこと、書いたこと、心配している保護者の不安などをどうくみ取っていけるかが大変重要であり、物理学や数学よりむしろ国語力が必要と思っています。物理や数学が苦手だったせいもあるかもしれませんが、医科や歯科が理科系に分類されていることに、今でもなんとなく不思議に思っています(笑)。

――小さいお子さんがいる保護者の皆様へのメッセージをお願いします。

岡田:子どもは正直で、具合が悪ければぐったりします。高熱が出ても重篤な病気でない場合は、結構元気です。一方、子どものことを良く知っているお母さん、お父さんから“普段と違うんです。”という言葉を言われた時は、こちらも緊張します。ご家族の方も子どもが普段と違うときは急いで、そうでない時は冷静に対応して頂きたいと思います。“子どもをよく観察することが大切ですね!”

――口腔歯学部における小児科の役割とは?

岡田:子どもの病気は、口の中から始まる病気もあれば、口の中に診断の手掛かりとなる所見も沢山あります。例えば、風邪をはじめとして、手足口病、麻疹、ヘルペス、おたふく風邪、口腔アレルギー、摂食障害などです。口腔内の所見は色々な病気の手掛かりになり、私達小児科医の診察の基本です。口腔歯学部の学生さんには、子どもの口を診たときに、保護者の方が訴えていない病気のはじまりや所見がある可能性が十分にあることを認識して、歯だけではなく、歯肉、粘膜、喉など口腔全体を診ることの大切さを理解して頂きたいと考えています。口の中から病気がわかることもあれば、口の中から病気が悪くなることもあるように、口腔は臓器の一つであるということを小児科医として伝えたいと思います。


小児科医として
口腔という臓器の
大切さを伝えたい

――それでは最後に歯科医師を目指す学生へ向けてメッセージをお願いします。

岡田:小児科医としてのこれまでの経験を基に、口腔と全身に関連した内容を効率よく伝えたいと思っています。一緒に楽しく学びましょう!

――岡田教授、本日は貴重なお話をありがとうございました。

岡田教授からのビデオメッセージ

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