福岡歯科大学

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学部・大学院

永井 淳 教授 インタビュー

「本学の地域連携の今、そして未来」
2016.05.02
地域連携センター
永井 淳 教授

今回は地域連携センターの永井先生にお話を伺いました。

――先生のご出身はどちらですか?

永井:愛媛県の今治市です。

――学生のときに打ち込まれたことは何ですか?

永井:高校2年までは、星や石など天文学や地学に興味があり、部活は物理部に所属して、山に登って、リュック一杯の石を集めて帰るという過酷な部活動をしていました。大学時代は、生化学の講義に感激して、教室に遊びに行って最先端の実験を見たり、お手伝いをしたりしていました。

――先生が歯科医師になろうと思われたきっかけは何ですか?

永井:高校2年の時に、テレビで歯周病は原因の分からない難しい病気であるという番組を見て、これを研究すれば、人の役に立てると思ったことと、高校の進路指導室で見つけた募集要項に、歯学部は「優秀な歯科医師を養成するとともに有能な研究者を育てるところである」というようなことが書いてあるのに、ハートを直撃されたのが歯科医師希望のきっかけです。

――先生が本学に赴任され、地域連携の仕事に携わられた経緯は?

永井:大阪大学歯学部を卒業する時に、岡山大学に新たに口腔治療学講座ができ、指導教官の先生が教授で赴任することになっていたため、一緒に連れて行ってもらい、岡山大学で12年間働きました。それからその教授から大阪大学の先輩で福岡歯科大学の歯科保存学第Ⅱ講座(歯周病学)の栢教授(当時、現福岡医療短期大学長)にご推薦いただき、本学の准教授として勤務することになりました。そして一昨年、地域連携センターの教授を拝命したのがきっかけで地域連携の仕事に携わることになりました。

――地域連携センターではどんな仕事をするのですか?

永井:いろいろな大学に地域連携センターがあり、それぞれ各大学の特色を出してその地域社会の問題を解決することを目的としています。本学の地域連携センターは、厚生労働省が打ち出している「地域包括ケアシステム」のなかで、歯科医師は何ができるのか、また、何をすればいいのかを示すことが、課せられた使命ではないかと考え、自治体、医療団体、及び地域との連携を強化し、地域高齢者や要介護者の口腔機能の向上を目指すという目標に向けて活動をしています。言いかえると、口腔から地域の人々をいかに元気にしていくかを考えるのが本学の地域連携センターの仕事だと思います。

――大学と短大の両方を兼ねていますが、どんなことに取り組んでいますか?

永井:歯科医師、歯科衛生士、介護福祉士等の多様な職種のスタッフとスムーズに連携できる環境が福岡学園にはあります。将来的にはこのメリットを活かしたカリキュラムを作っていきたいと思っています。

――地域社会との実際の連携とは?

永井:昨年、田村校区のみなさんと一緒に、コミュニティ カフェ「かふぇ もりのいえ」を始めました。ありがたいことに、地域の方々は家族のように親しく、顔の見えるお付合いをしてくださっています。本学の学生もボランティアで地域の運動会や夏祭り等イベントに参加しています。
地域社会との関わりでは、「親身になって同じ目線で一緒に地域社会の課題を解決する」ことを大事にしたいと思います。

――今後の地域連携センターはどのように活動されていく予定ですか?

永井:学生のコアカリキュラムに、今までにない新しい時代に対応できる歯科医師を養成するためのカリキュラムが必要ではないかと思っています。
高齢者で病気を持っている方の治療をどう管理していくか等を一つにまとめて新しい体系のもとに整理し直すことが必要になってくるのではないかと思います。


インタビューを受ける永井先生

――病病連携について教えてください

永井:病病連携とは、専門の違う病院が連携して効率的に医療を提供することと一般的には言われています。でも実はその連携の中に歯科のない病院が8割もあるのが現状です。これは歯科医療に関して空白地帯になっている危険性があるということだろうと思います。すなわち、病院に歯科がないために、医療スタッフが口腔ケアの大切さについて教育を受ける環境がないということになります。歯科のない病院に派遣された歯科のスタッフが、医療スタッフの教育資源となり、必要な知識や器具などの環境を整える支援ができるようになると、入院患者さんの口腔内環境も、手術からの回復も見違えるように変わってくると思います。このような歯科と医科の病病連携を進めていかなければなりません。

――急性期の病院は入院期間が短いですが、口腔ケアをする必要はありますか?

永井:3~4日間、歯を磨かないだけでも歯の表面にばい菌が積み重なるように増え、歯ぐきには炎症が起こり始め、肺炎を起こしたり、生活習慣病を悪化させるような種類のばい菌も増えてしまいます。したがって急性期病院でも口腔ケアは大事なのです。
現在、地域連携センターが、急性期病院への訪問歯科診療や医療スタッフの方々向けの教育派遣のコーディネートを行っています。先ほどお話しした本学ならではの特色を生かした病病連携ですね。
今後の病病連携の展望として、福岡県では消費税増収分を活用して、がん治療の拠点病院での周術期口腔機能管理を県単位で強化する構想があります。そういった部分で今後ますますコーディネーターとして関わりが出てくる可能性があります。


――病診連携について教えてください。

永井:急性期病院で診ていた患者さんが慢性期病院に移ったり、自宅に戻って療養したりする場合などに、口腔ケアの担当を地域の歯科医院の先生に引き継ぐことが必要になってきます。これが病診連携です。
今後、福岡市歯科医師会の先生方と協力してネットワークづくりを進めていくとともに、同窓生の先生方には、福岡歯科大学生涯研修プログラム「在宅歯科医療に役立つ知識」などを通して、知識や情報の共有化をさらに進めていきたいと思っています。

――診療と研究も並行して行われているようですが・・・。

永井:現在は週3日程度診療を行っています。
診療の中で、何か着想を得て、実験して深く調べるというスタイルが理想ですね。
本学に赴任した当初から拝見している患者さんの診療が22年目となり、患者さんのライフステージの変化に対応した歯科治療の実践を意識するようになってきました。そういうノウハウをまとめていくのもこれからのテーマのひとつと考えています。

――福岡歯科大学で学生に伝えたいことは何ですか?

永井:20年後の2035年は、少子高齢化で人口が減少していく一つのピークと言われる年で、その頃の歯科医療を支えているのは今の学生の皆さんです。多職種連携の中でイニシアチブをとって働くために、将来のいろいろな職種の方々とのコミュニケーションの基礎言語として、口腔医学、基礎医学を今のうちにしっかり身につけておくことが大事です。ぜひ頑張ってほしいと思います。

――受験生の皆さんへのメッセージをお願いします

永井:歯科医師は、口の健康から全身の健康を守るかけがえのない尊い職業です。人の役に立ちたいという高い志を持った人には、ぜひ福岡歯科大学を受験してもらって、口から地域を元気にする歯科医師になってもらいたいと思います。待っていますよ。

――お忙しいなか、貴重なお話をいただき有難うございました。

永井教授からのビデオメッセージ

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