福岡歯科大学

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学部・大学院

総合歯科学講座について

講座概要

総合歯科学分野は2001年4月大学の機構改革に伴い開設された比較的新しい講座で、総合歯科学分野、高齢者歯科学分野、訪問歯科センターの3分野で構成されています。総合歯科学分野は専門分野にとらわれないオールラウンドな歯科診療を実施するほか、研修歯科医の育成、多職種との連携・協働ができる歯科医師の養成を目的としています。高齢者歯科学分野は高齢者の身体的な変化と口腔領域の老化を把握して安全な治療を行うほか、全身疾患と歯科治療の関係を理解できる歯科医師の養成を目的としています。訪問歯科センターは訪問歯科診療を行うほか、周術期をはじめ様々な疾患を有する患者さんの病態に配慮し、医科と連携した安心・安全な歯科治療が行える歯科医師の育成をめざしています。

主任教授挨拶

総合歯科学講座 総合歯科学分野 教授 米田 雅裕

総合歯科学講座は総合歯科学分野、高齢者歯科学分野、訪問歯科センターの3分野で構成されており、それぞれ特色ある教育、研究、診療を行っています。その一方、毎朝、合同で診療前ミーティングを行うなど常に情報交換を行い、連携を取りながら活動を進めております。私たち総合歯科学講座のスタッフは様々な分野、機関と協働してより良い教育、研究、診療を行って行きたいと考えております。

それぞれの名称をクリックすると、詳細情報に移動します。

総合歯科学分野

短期間で治療が終了する患者様の総合的な歯科診療と、歯科医師臨床研修に関する管理・運営が当分野の大きな目的です。さらに、学部教育にも力を注いでおり、卒前教育から卒後教育、生涯研修へと続くシームレスな教育をめざしています。そして、その実現のために他分野や他の機関との連携を進めています  研究については教育開発や健診等の臨床に基づいたテーマのほか、細菌学的および組織学的な基礎研究も行っています。特に口腔保健学講座や福岡医療短期大学と共同で行っている口臭研究は世界をリードするものであり、本学の独自性を示すものです。今後は他分野や企業との連携を進め、さらなる発展をめざしています。

教育の概要

卒前教育

2年生:基礎免疫学(分担)
3年生:齲蝕学Ⅰ、Ⅱ(分担)
4年生:歯科医療管理学(歯科医師の倫理、医療面接、医療安全・感染対策、医療保険、チーム医療など)
5年生:臨床実習、医歯学連携演習(分担)、Global Medical EnglishⅡ(分担および取りまとめ)
6年生:統合演習

卒後教育

臨床研修歯科医、若手医局員に対して包括的歯科治療指導、医局主催研修セミナー・実習(検査、診断、総合診療計画、歯冠形成、歯内治療、歯周外科、インプラント実習など)、症例報告会など。

臨床教授、臨床准教授による年間計画に基づいた臨床教育実施

大学院教育

基礎から臨床まで幅広い研究を行っています(研究テーマ参照)。From Bench to Clinic: 臨床に繋がり応用できる研究が主です。現在大学院生1名のほか、福岡医療短期大学所属の研究生1名、開業歯科医の研究生2名が在籍しています。過去8名が博士課程を修了し学位を取得しました。また、論文博士3名を輩出しました。

診療

医科歯科総合病院においては、歯科を受診する患者さんの初診担当と、主として比較的短期間に治療の終了が予測される症例の総合的歯科診療を担当しています。また、近年の歯科患者の動態に関連して、今までの診療に加えて成人の口腔機能の予防管理等、現代の歯科医療に適合した包括的歯科診療体系を整えるようになりました。診療機器としては、エルビウムヤグレーザー、炭酸ガスレーザー、歯科用顕微鏡、生体情報モニタなどを有しています。また、口臭クリニックも担当し、ガスクロマトグラフィー、オーラルクロマ、ハリメーター、各種細菌検査装置等を用いて国内最高レベルの口臭測定を行っています。

研究テーマ

1.細菌学的研究

歯周病原性細菌が口腔機能、とくに口臭発生におよぼす影響を研究しています。これまでにグラム陰性菌のプロテアーゼやグラム陽性菌のβガラクトシダーゼが口臭産生に強く関わっていることを発表しました。そして、歯周病原性同士の相互作用で細菌増殖が促進され、その結果、口臭増加につながることを明らかにしました。また、歯科臨床で広く利用されているS-PRGフィラー溶出液の抗菌効果および口臭抑制効果についても報告しました。

総合歯科学分野の口臭抑制法コンセプトは抗菌剤、消毒薬に依存しない身体に優しい方法であり、乳酸菌や希少糖がその例です。希少糖による口臭抑制は基礎研究段階ですが、口臭抑制食品への応用が期待されるます。また、身体に優しい健康食品であるラクトフェリンによるプロテアーゼ抑制についても福岡医療短期大学との共同研究を実施しています。

2.免疫組織学的研究

象牙質・歯髄複合体におけるメカノセンサーを介した象牙質形成のメカニズムを明らかにするため、TRPV4チャネルの発現を免疫組織学的手法、遺伝子レベルで解析を行っています。これらの機能を明らかにすることは、新たな機能を見いだすことができ、さらに歯髄保護の観点から覆髄や歯髄切断法への応用など非常に意義があり、既存の歯科材料へのTRPチャネルを標的とした薬剤の添加による硬組織誘導へと繋がる創造性を有しています。

3.口臭に関する臨床研究

口臭抑制に関する臨床研究を口腔保健学講座と共同で行っています。とくに乳酸菌による口臭抑制効果についてはプラセボ対照ランダム化比較試験やフィールドワークにより多くの英語論文を発表し、国内外から注目されています。乳酸菌含有食品はすでに市販されており、多くの口臭患者の悩み解消に役立っています。今後は希少糖による口臭抑制効果についても臨床研究を実施する予定です。また、口臭を簡単に測定できる装置の開発も企業と共同で進めており、臨床研究も開始しています。

4.口腔健診に関する臨床研究

近年、口腔健診の重要性が高まっています。私たちはより効率的で正確な口腔健診を行うためのQLFライトの開発、応用について研究しています。また、口腔健診の結果を分析し、全身の健康につなげるための研究を健診センターや福岡看護大学と共同で行っています。

5.教育法改善のための研究

教育はその方法によって教育効果が変わって来ます。われわれは講義や実習の内容について常に改善を行い、その成果を確認するための研究を行っています。また、新しい実習システムの開発や医療面接実習改善のための研究などを行っています。

 

総合歯科学分野 所属教員

教授 米田 雅裕
准教授 山田 和彦
講師 畠山 純子
講師 佐藤 絢子
助教 山本 繁
助教 吉田 瑞姫

高齢者歯科学分野

日本の65歳以上人口は平成24年には23%を超え、世界のどの国も経験したことのない超高齢社会を迎えています。歯科診療所の外来患者のうちの65歳以上の患者の占める割合は30%を超え(厚労省平成23年度患者調査)、歯科診療においても高齢者への対応は必須のものとなりました。
 加齢に伴って、高血圧や心疾患、糖尿病、認知症など全身的な疾患を有することが多くなります。また、身体機能や口腔を構成する諸器官にも加齢変化が生じ、関連した機能障害や口腔の疾患が発生しやすくなります。歯や口の健康は、咀嚼機能だけでなく、心理的・社会的な働きも重要で、口腔の健康の維持は高齢者の能力や意欲の維持に効果を発揮するものと考えられます。高齢者歯科は、今後ますます進んでいく高齢化社会のニーズに合わせてできた、臨床の多様な分野の学際的な領域です。
高齢者歯科という臨床歯学の分野は、高齢者の身体的な変化と口腔領域の老化を把握し、社会状況・精神的特徴を理解し、高齢者の全身疾患と歯科治療の関係を理解し、訪問歯科診療も含めた高齢者歯科治療への対応ができる歯科医師の養成と教育、研究を主体として、口腔医学に寄与することを目標とします。

教育の概要

学部教育について

高齢者の社会状況・精神的特徴を理解し、全身的加齢変化と口腔領域の老化を把握することを最初の段階に学習してもらいます。また、高齢者の全身疾患と歯科治療の関係を理解し、訪問歯科診療も含めた高齢者歯科治療への対応ができる基礎力を習得することを目標とします。具体的には、
・高齢化社会の特徴を理解し、歯科診療との関連
・全身的加齢変化と口腔諸器官との関連
・高齢者・要介護高齢者の歯科処置の基本的治療方針、診療の流れ
・高齢者にしばしばみられる疾患の病態と歯科診療上の留意点
・摂食・嚥下障害の病態と診断、リハビリテーションについて
・高齢者の医療保険制度と介護保険制度
・要介護者に対する口腔ケアとQOLの改善
といった点について理解を深めてもらいます。

臨床研修について

以下のような研修を通年で行う予定です。
1.高齢者歯科診療
1) 老化の身体的、心理的特徴
・高齢の患者を通じて、全身の加齢変化・生活環境への理解
・高齢者とのコミュニケーションスキル
・認知症患者への理解とその対応

2)有病高齢者の口腔疾患の特徴の理解と治療計画立案
・有病高齢者の歯科的な問題の把握
・高齢者の背景をふまえた基本的な治療計画の立案
・摂食・嚥下障害のスクリーニング、嚥下内視鏡などの診断法とリハビリテーションプログラム

3)高齢者に対する保存・補綴治療
・高齢者に対する基本的な保存・補綴処置の実施

4)有病高齢者に対する小外科処置
・高齢者で頻繁にみられる疾患の理解
・おもな基礎疾患に対する基本的な対処法
・高齢者に対する小外科処置の実施

研究テーマ

1.歯を失うことは全身の健康に影響を与えるか?

日本全国の歯科医師2万人以上の健康調査をもとに、歯の数と寿命、肺炎や大腿骨頸部骨折、心臓病、脳卒中などとの関連を調査しています。名古屋大学、京都大学との共同研究で、追跡は今年で6年目を迎えました。

2.歯の手入れを定期的に行うと幸せになるか?

日本全国の歯科医院受診患者さんを追跡して、定期的に歯の手入れをしている人がしていない人にくらべてQOL(生活の質)が高いかどうかを追跡調査しています。現在、2千人以上の患者さんが、この調査に登録してくれています。

3.健康に関連した情報は本当に正しいか?

各種治療法の情報の確からしさを探り、さまざまな論文や報告を集約して、本当にその治療を勧めるべきかどうかの判定作業をしています。英国のコクランライブラリーという臨床情報のデータベース作成に協力しています。また、日本歯周病学会や歯科保存学会の診療ガイドライン作りにも参画しています。

4.高齢化の進んだ過疎地区・公団住宅などの健康支援策の検討

公共交通機関の廃止や高齢化の進展などによって医療へのアクセスの得難くなった地域の支援の体制についての調査を開始し、地域の見守り4年目となっています。福岡市内の高齢化の進んだ団地の調査の準備も開始しています。

高齢者歯科学分野 所属教員

教授 内藤  徹
准教授 梅崎陽二朗
講師 益﨑 与泰

訪問歯科センター

2025年の地域包括ケアシステムの完成を目指す我が国において、従来の外来診療だけでなく、病院、介護施設、居宅等にて患者さんの疾患、病期・病態および多様なニーズに対応した訪問歯科診療の必要性が国策として推進されています。また、高齢化率が30%に迫る現在、離島を含むへき地での歯科診療をはじめ、今後は重症障害にて居宅療養中の小児患者への歯科的対応についてもニーズが高まっていくと予想され、将来的には、このような訪問歯科診療体制が、かかりつけ歯科の役割の一つとして位置付けられていくことが望まれています。
このような状況のもと、2019年10月より訪問歯科センターは、これまでの診療業務だけでなく、全国初の教育・研究分野として本学に新設されました。我々、訪問歯科センターは、高度急性期病院での周術期等口腔機能管理から高齢者介護施設や居宅、さらには離島での歯科診療に至るまで、様々な患者のニーズに対応した歯科診療を専門診療科の協力のもとで展開しています。 また、大規模災害発生時には、日本歯科医師会からの要請のもと、本学代表として歯科医療支援を行う責任を担っています。
一方で、外来診療においてもがん周術期をはじめ、様々な疾患を有する患者さんの病態に配慮し、医科と連携した安心・安全な歯科治療を実践しています。
日本有病者歯科医療学会、日本障害者歯科学会の指導医のもと、上記患者さんへの歯科診療・全身管理についての指導を行うとともに、教育・研究面においても訪問診療、全身疾患を有する患者さんへの歯科治療時の注意事項、災害時歯科医療、全身疾患と口腔疾患との関係、さらには医療連携体制の構築等について、学部学生・大学院生および医局員に指導を行っています。

教育の概要

<卒前教育>

3年生:地域医療・災害口腔医学(分担:チーム医療、医療連携・地域包括ケアシステム、訪問診療、災害時歯科医療、全身疾患を有する患者への歯科治療)
5〜6年生:臨床実習Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ(訪問実習、全身疾患を有する患者への歯科的対応)

<卒後教育>

臨床研修歯科医、若手医局員に訪問および外来にて、様々な疾患・症候群を有する患者に対する歯科治療・口腔管理の実践について、医科との連携を前提とした臨床教育を行っています。また、日本有病者歯科医療学会の認定施設として、指導医のもとで認定医・専門医取得のための教育を行っています。

<大学院教育>

様々な全身疾患と口腔病変・口腔管理との関連性についての臨床研究、多職種連携・医療連携システムの構築およびそのための多職種連携教育(IPE: Inter-professional education)についての研究、さらには口腔外科疾患や循環器疾患をはじめ、様々な全身疾患の要因についての基礎研究まで、幅広く大学院生の興味に即した研究指導を行っています。

診療

高度急性期病院、地域密着型病院、療養型病院、高齢者介護施設、居宅、へき地(離島)にて、専門診療科の協力のもと、様々な患者さんの疾患・ニーズに対応した訪問歯科診療を行っています。また大規模災害時には、日本歯科医師会の要請により歯科医療支援協力を行う責務を担っています。さらに、外来診療においてもがん周術期をはじめ様々な疾患を有する患者さんに対して、医科と連携し、各種医療機器使用によるモニタリング等による全身管理のもとで、安心・安全な歯科治療を行っています。

研究テーマ

<全身疾患と口腔管理・口腔感染症との関連性についての研究>

全身疾患、特に誤嚥性肺炎と口腔管理や口腔カンジダ症をはじめとした口腔感染症との関連性についての臨床研究を行っています。最近の研究成果としては、高齢者において細菌性肺炎と口腔カンジダ症が強い関連性を示すことを世界に先駆けて発見し、誤嚥性肺炎患者の口腔衛生管理の重要性を示しました(Nakajima et al., Oral Dis, 2020)。今後も再生医学研究センターと共同した基礎研究を含めて、様々な全身疾患と口腔管理・口腔感染症との関連性を解明していきたいと考えています。

<多職種連携・地域医療連携についての研究>

本学訪問歯科センターは、高度急性期病院、地域密着型病院、高齢者介護施設、居宅、離島と様々な場所・患者の疾患および患者ニーズに対応した、幅広い訪問歯科診療を展開しています。そのため、臨床実習生に対して、地域包括ケアシステムの中核を担う地域密着型病院から高齢者介護施設まで、急性期から慢性期、終末期に至る患者への訪問歯科診療を通じた口腔管理について指導をおこなうとともに、臨床研修歯科医には高度急性期病院での訪問歯科診療で行う周術期等口腔管理についても指導する教育システムを導入・実施しています。
高度急性期病院での周術期等口腔機能管理に関しては、福岡県・福岡市歯科医師会と連携し、かかりつけ歯科・がん診療連携歯科と協力して、入院前から退院後まで切れ目のない歯科医療連携を実現しました。
一方、福岡市歯科医師会が全国に先駆けて構築・実施している訪問歯科診療マッチングシステムについて、構想段階から会議に参加してマッチングシステムの実現に関与するとともに、実施後は後方支援病院として診療のサポートをしています。
多職種連携・地域医療連携教育としては、平成29年度私立大学研究ブランディング事業の一環として、多職種による疾患・症候別、病期・病態別口腔健康管理マニュアルを本学・福岡看護大学・福岡医療短期大学の3大学および多職種にて作成し、各大学の教職員、臨床実習生に配布・活用しています。さらに、2019年4月より、全国初の試みとして、九州大学病院と連携した臨床研修医交換制度を発足し、本院および九州大学病院の特徴である地域連携型医療と院内完結型医療の双方を体験できる研修システムを立ち上げました。
以上のように、本訪問歯科センターは多職種連携・地域医療連携について、新たな地域医療連携教育・診療システムの開発や多職種連携教育の開発・研究を行い、適宜アンケート調査等によりフィードバックを行い、改善に努めています。

<抗菌薬適正使用についての研究>

2015年にWHOが、また2016年に厚生労働省が、現在のような抗菌薬乱用の状態が続くと2050年には抗菌薬耐性菌による死亡者は1000万人を超え、がんによる死亡者を上回ると予想されることから、その対策として、AMR(抗菌薬耐性菌)アクションプランという対策を掲げました。その一環として、本院院内感染対策チーム(ICT)と協力し、抗菌薬適正使用についてのサーベイランスや啓発活動を行い、その効果についての研究をしています。

訪問歯科センター 所属教員

准教授 今井 裕子
講師 堤 貴司
助教 利光 拓也

研究業績