口腔保健学講座について
講座概要
口腔保健学講座は、口腔健康科学分野、社会歯科学分野、医療統計学分野で構成されており、医療人間学講座とともに2つの大講座で社会医歯学部門を形成しています。担当する範囲は、予防歯科学、衛生・公衆衛生学、社会歯科学、健康科学、保健体育、社会医療情報学など多岐にわたっていますが、これらの領域における教育・研究は、現代社会において、地球規模で重要な位置を占めるようになっています。一方、「地域に開かれた大学」の視点で教育研究機関である大学をとらえると、地域住民へ直接的な健康教育に加えて、地域の保健医療従事者に対して口腔保健に関する研修支援を通じた間接的な関わり等の地域の口腔保健活動の推進支援も大学の重要な使命の一つです。特に、新たに始まった国の制度である「歯科口腔保健の推進」や「健康日本21(第二次)」における地域での取組の推進に関して、地方自治体や地域の歯科医師会への研究成果による科学的根拠に基づいた最新技術の支援は、大学の重要な役割として地域の制度に位置づけられています。そして、実際の健康支援の実践活動は、将来の保健医療従事者である歯学生の経験の重要な機会でもあり、積極的に教育に反映させたいと考えます。
主任教授挨拶
口腔保健学講座 口腔健康科学分野 教授 谷口 奈央
口腔保健学講座は、上記のように大変広い領域を担当します。基礎に該当する科目は低学年から開講し、高学年では体験や実習を通して基礎知識を臨床に結び付けることで学びを深めます。超高齢社会を迎えた今、口腔健康管理の重要性への認識はますます高まっており、歯科医師には豊富な医学知識と多職種との円滑な連携が求められています。学生の皆さんには、口腔健康科学、社会歯科学、医療統計学で身につけた広く分厚い教養を基盤とし、これからの歯科医療を牽引するリーダーとして人間力を高めていって欲しいと願いながら、当講座の教員もそれぞれの専門領域で日々研鑽を積んでいます。
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口腔健康科学分野
口腔健康科学分野では、う蝕、歯周病など口腔疾患の予防、口腔の健康の増進に関わる疫学、基礎・臨床・行動科学を扱い、この成果を広く世界に還元することを目標としています。さらに、最近、特に注目されている口腔と全身の関係を人々の健康増進に役立てることについても、全人的な視野からの教育、研究、臨床支援活動を進めています。本分野の活動の場は、本学内はもちろんのこと、学校、職域、地域にわたっています。
コモンリスクファクター・アプローチ
多要因疾患である歯周病の発症原因として、いくつかのリスク要因の候補が提案され、現在、確実なリスクファクターとなるものが明確となってきた。このうち因果関係が最も明確で、リスクへの介入効果が示されているのは喫煙である。歯周の健康を対象とした喫煙対策は、世界ではこれまでに例がほとんどなく、本学から発信された教育・研究・社会貢献活動が世界の歯科界をリードしているといえよう。さらに、口腔の健康を増進するための栄養の改善、口腔と全身の関係、NCDsと口腔疾患の共通リスク対策、口腔保健行動の動機付けを支援するための動機づけ面接法等の新しい技術開発と普及についても新しい知見を開拓し、人々が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会づくりに役立てるべく応用を進めている。
オーラルエコロジーアセスメント
歯周病は、歯周ポケットと周囲組織との相互関係により破壊が進む疾患であることから、歯周環境と歯周組織の機能に着目した研究を進めている。歯周環境は、歯周ポケットの酸素分圧、温度、pH等をメディカルエレクトロニクス機器により計測する。歯周組織の機能は、歯肉血液中のヘモグロビン酸素飽和度、歯肉溝滲出液中の生理活性物質・サイトカイン等により評価を行う。両者の相互作用を検討することにより歯周病の病態を推定し、この成果を歯周病のスクリーニング検査や口腔と全身の健康の関係にリンクさせていく。
オーラルヘルスケアアセスメント
薬剤は厳しい基準によりその用法・用量が定められている。オーラルヘルスケア製品は、健康の保持増進の一方で、歯肉炎など口腔疾患の治療目的でも使用されることから、欧米諸外国ではクリニカルデータ(EBM)に基づいたオーラルヘルスケア製品の機能評価が行われている。私どもの分野では、欧米の先進的な機能評価法を導入し、また歯肉の微小循環改善効果といった新しい評価方法を考案することにより、製品開発の技術支援を行い、製品の効果を確認するための研究を行っている。
研究テーマ
1.歯周病予防に関する疫学研究および介入研究
歯周病は多要因疾患である。これらの多要因を解明し、さらにリスク要因を排除していった場合の理想的な予防効果の予測と、実際に臨床・地域・職域の現場における適用法についての検討を行う。
2.たばこ対策に関する研究
喫煙は、歯周病をはじめ口腔の健康と歯科治療の効果に重大な被害をもたらす。歯科における禁煙の導入および禁煙指導・支援の効果的な方法を開発し、その効果を調べ、普及方法の検討を行う。また、禁煙の口腔の健康および歯科治療に関わる経済効果について検討する。歯科の禁煙支援の地域における取組の位置づけについて、科学的根拠に基づいたガイドラインの提案を行う。これらの研究成果を、社会に還元し、わが国の喫煙による健康被害の低減につなげる活動を行う。 また、加熱式タバコの口腔の健康影響の基礎・臨床・疫学研究をすすめる。アジア、東ヨーロッパへのWHO歯科簡易タバコ介入の普及に関する研究を行う。
3.歯肉溝滲出液の生化学検査の歯周保健への応用
歯肉溝滲出液にはさまざまな生理活性物質が含まれており、これらの生化学情報は、尿、血液検査で得られる生化学情報と同様に、口腔および全身の健康にとっても重要な情報である。これまでは、歯周疾患のスクリーニング検査法としての位置づけで検討を行なってきたが、口腔疾患のリスクスクリーニングおよび、行動変容のツールとしての口腔の持続性炎症およびその全身への影響の観点から、保健指導、特にメタボリックシンドローム予防のための行動変容支援の用途について検討を行なう。
4.オーラルヘルスケアー製品機能の効果評価に関する研究
オーラルヘルスケアー製品の開発過程において、製品機能の口腔の健康に対する効果の評価技術に関する研究およびオーラルヘルスケアー製品の効果の評価を行う。
5.う蝕に関する疫学研究
う蝕の多寡には多くの要因が複雑に関与している。集団を対象とした疫学調査から、要因それぞれの関与の程度を把握し、現実的なう蝕予防につなげる研究をすすめる。
6.フッ化物応用によるう蝕予防の研究
各種フッ化物応用が開発されているが、わが国においては未だ普及が遅れをとっている。フッ化物応用普及のために、診療室、家庭、園・学校、地域など様々な場面での応用のプロセスを研究する。
口腔健康科学分野 所属教員
教授 | 谷口 奈央 |
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講師 | 藤本 暁江 |
講師 | 内藤麻利江 |
助教 | 矢田部尚子 |
社会歯科学分野
社会歯科学分野は口腔保健学講座の一分野として、講義・演習・実習を分担し、臨床では総合歯科の中で役割を担っている。社会歯科学教育の講義においては、保健・医療・介護・福祉といった法律や制度だけでなく、研究調査結果に基づいた客観的な情報、保健医療制度の現状や課題、そして人間の行動やその認識など心理的側面からの知見を交え、学生が将来、保健・医療・介護・福祉の現場で多くの保健医療関係者と連携のできる歯科医療従事者として、活躍できるように、精力的に取り組んでいる。
研究テーマ
1.臨床実習学生が記載した自由記述文のテキストマイニングを活用した授業評価分析
自由記述文から得られたテキストデータをテキストマイニングを活用し、頻出語や特徴語を抽出することによって、計量的に分析を行っている。
2.歯学部生の喫煙に対する寛容度と加熱式タバコに関する意識との関連
近年急速に認知性と使用者が増加している加熱式タバコについて、非喫煙および喫煙経験ある歯学部生に対して、意識と喫煙に対する寛容性との関連を調査している。
3.中学生の口腔健康状態・歯科受診の機会と保護者の歯科に関わる意識との関係について
子どもの健康は,保護者の健康意識と密接に関係している可能性が高い。現在、中学生の保護者に対して、健康に関する意識を調査し、子どもの受診行動との関連を把握することを目的に分析を行っている。
4.高齢者の歯の喪失を抑制する新規根面う蝕予防剤の開発
高齢者の歯周疾患などによって露出した歯根はう蝕リスクが高く、根面う蝕は高齢者が歯を喪失する原因の一つとなっている。フッ化物を利用した高齢者の露出した歯根に応用可能な根面う蝕予防剤の開発を行っている。
社会歯科学分野 所属教員
准教授 | 島津 篤 |
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医療統計学分野
医療統計学分野は、口腔保健学講座を構成する一分野として、平成13年4月1日に開設された。医療統計学分野は医学や歯学の研究の発展、また科学的な根拠に基づいた臨床(EBM・EBD)という観点からみて、本分野の果たすべき役割は大変重要なものである。
研究業績
福岡歯科大学・福岡医療短期大学研究業績データベース